「インターネットがこれだけ発達して、ブラック企業に関する情報も溢れてる時代なのに、なんでブラック企業に入る人がいるんだろう…?」
とお思いの方もおられるかもしれません。疑問はごもっともです。中には将来の独立や自らの修行のために、ブラックであることを覚悟したうえで入る人もいるようですが、多くはそうと知らずに入り、入社後「こんなはずじゃなかった…」と後悔することになるものです。
全国的にニュースになるような事件や不祥事を起こした会社であれば、悪名も知れ渡っているので警戒できますし、ネットやSNSの口コミで確認できるでしょう。
しかし残念ながら、ブラック企業は「ポジティブでいい雰囲気っぽいPR」が大の得意技なのです。なぜなら、ブラック企業は労働環境がよくないだけにいつも人手不足で、常に求人募集に必死の状態。必然的に、どんな求人広告やキャッチコピーがウケるかよく分かっています。当然ながら「私たちはブラック企業です」なんて正直なことは絶対に言わず、楽しそうな雰囲気と横文字のフレーズで求職者の興味を惹き、あなたのことをいかにも特別扱いしているかのように歓待することでしょう。「当社はまさに、あなたのような人を求めてたんです!」と言われて悪い気がする人はいません。
私は、そうやって巧妙に仕組まれた罠にかかり、ブラック企業にウッカリ入ってしまって深く後悔している人を長年にわたって大勢見てきました。あなたにはぜひ本稿をお読み頂いて冷静に考えて頂きたいのです。あなたとあなたの大切な人の人生を、無駄にすることがないように…
1:「求人広告」で見極める!
1-1:いつも採用募集している/求人広告を長期間にわたって掲載している
⇒補充が追い付かないくらい、退職者が多い可能性があります!
新卒でも中途でも、採用活動は「必要な人員が採用でき、充足したら終了する」もの。ところが、求人サイトや求人情報誌、折込求人広告などを見ていると、通年で毎週のように採用している会社が見受けられます。そして、そのような企業に限って常に「急募!」などと告知しているのです。
おそらく、その会社は何かしら人が辞めていく要素があり、常に人員を補充していないと間に合わないくらいの内部環境であることが想像されます。労働環境が劣悪なのか、待遇が悪いのか、人間関係や社内風土の問題なのか、その全部か・・・ 注意しておくに越したことはありません。
1-2:採用基準が低いことをアピールしている
⇒「そうでもしないと人が集まらない会社」である可能性が高いです!
ふつう、中途採用する場合は、即戦力として同業界・同職種の実務経験者でかつ実績を持った人を求めるもの。だからこそ「Python/Rを用いた機械学習、統計解析によるデータ分析経験2年以上」とか「プロジェクトファイナンスの実務経験、および業務遂行に十分な英語力(TOEIC860点以上)」といったように、具体的な基準を設けることが一般的です。そこまで厳密ではない場合でも、「無形商材を扱い、顧客の課題をヒアリングし、提案活動を行った経験」くらいの要求はするものです。しかし、そこで次のようなキーワードを見かけたら要注意。
「学歴不問!」
「資格不問!」
「実務経験不問!」
「業界未経験者可!」
「書類選考ありません!」
「誰でもできる簡単なお仕事です!」
こういった会社は往々にして「そこまでしなければ採用できない理由」があるものです。それはハードワークなのか、プレッシャーがキツいのか、給与面、社風など、何かしら懸念材料がある可能性が高いですし、それが本当に誰でもできるような簡単な仕事だったとしても、それはすなわち「どれだけやってもスキルにならない仕事」ということになります。いずれにせよ、「なぜそんなに基準を下げてまで必死に採用しなければならないのか?」という疑問を持ち、確認しておく必要がありますね。
1-3:初任給が高い/モデル賃金が高い
⇒その金額をフルに得るためには何らかの条件がつく可能性が高いです!
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、新規学卒者の令和元年初任給は、大卒者で「21万200 円」、高卒者で「16万7400 円」でした。目安として、その金額から3割を超えて高い設定をしている会社は「故意に額面を高く見せている」可能性が高く、大体ウラがあると考えてよいでしょう。
まず考えられるカラクリは「みなし残業代」。これは賃金の中にあらかじめ一定時間分の残業代を含ませておく制度であり、一定の残業代を固定して支払うことから「固定残業代」とも呼ばれています。例えば「初任給25万円!」と聞くと「おっ、高いな!!」と思われるかもしれませんが、よくよく読んでみると「みなし残業代5万円/月30時間分を含む」などと書いてあるかもしれません。その場合の内訳は「基本給20万円+固定残業代5万円」ということになります。そうすると、基本給部分はむしろ平均より低く、労働時間で割るとかなり割安になってしまうでしょう。
その他によく見かけるパターンは「月収50万円~可!」といったキャッチコピー。でもよく見ると「※ノルマ達成時の報奨金が全額支給された場合」などと書いてあったりします。このとき、50万円はあくまでも「売上をあげて目標を達成できればもらえる可能性もある、という理論上の数字」であり、全員に保障されるわけではまったくありません。同業界や同職種の平均と比べて明らかに高給だと感じた場合は、まずそれが「基本給部分」なのか「みなし残業代や報奨金等を含めた総額」なのか、そしてなぜ高い設定なのか、細かく確認して選ぶ必要があります。
1-4:今いる社員数に対して、一度に採用する人数が多い
⇒退職者が多い可能性があります!
現時点での社員数と、今回の求人広告で採用しようとしている予定数を比べてみましょう。目安としては、「全社員数の30%を超える人数を一度に採用しようとしている」なら要注意。これは、募集段階~入社後において何らかの理由で選考を辞退したり辞めたりする人が多く、それを見積もった上で採用している、という可能性があるためです。
また、一度に大量人数を採用してしまうと、入社後あなた自身にしわ寄せが来る可能性が高いのです。それは、「入社してきた社員に対して教育・研修を施し、管理し、サポートできる上司や先輩社員の数が相対的に少ない」状況になってしまうから。そうなると、社員一人当たりが受けられる仕事のフォローやマネジメントが手薄になってしまうことに繋がり、成長のチャンスを逃してしまうばかりか、評価、昇進、昇給の機会まで逃がしてしまうかもしれません。
2:「Webサイト」「ネット上の情報」で見極める!
2-1:Webサイトのつくりが稚拙
⇒レベルが低い会社かもしれません!
今や、Webサイトは「企業の顔」ともいえる存在です。にもかかわらず、その会社のサイトが
・デザインが全体的にダサい
・見にくい、使いにくい、分かりにくい
・誤字・脱字がある
・文法的におかしい文章
・リンク切れを放置している
・更新頻度が低く、半年前の「最新ニュース」や、既に終了したイベント案内が載っている
といった要素に当てはまるなら要注意。肝心の「顔」をまもとに管理できていないのは、「このままではまずい」と気づける社員がいないか、いたとしても改善できない何らかの理由(声を上げられない、金銭的な問題など)があることが考えられます。
2-2:「社風」や「雰囲気の良さ」だけを強調している
⇒「他にアピールできる強みがない会社」である可能性が高いです!
自社商品やサービスに何かしらの強みがあり、顧客からの反響もある会社なら、「第○回中小企業優秀新技術賞にノミネート!」「ホワイト企業アワード部門賞受賞!」といったように、具体的な成果とともにアピールするもの。しかしそういった強みが何もない場合、アピールできる材料は「社員同士がみんな仲良し」とか「アットホームな雰囲気」くらい、ということになります。そのように数字を挙げず、ふわっとした抽象的な要素しかアピールしていない会社は要注意です。
これは求人広告でも同様。社員の仲が良くてアットホームなのは素晴らしいことのように聞こえますが、中には「家族経営」を「アットホーム」と言い換える会社もあるのです。雰囲気以外で拠り所にできる強みがある会社なのかどうか、確認しておく必要があります。
2-3:会社概要や仕事内容の説明が「抽象的」もしくは「横文字でそれっぽいイメージ」
⇒不人気な仕事、ストレートに言えない仕事であることを隠している可能性があります!
仕事選び・会社選びの段階では、その会社や仕事が持っている「イメージ」が先行するもの。ブラック企業はそれを逆手に取り、とにかくポジティブな印象を植え付けようとしてくるので注意が必要です。
以下は、実際に求人情報誌に掲載されていた「職種」もしくは「業務内容」です。実際なにをする仕事なのか、イメージがつくでしょうか…?
1) オフィスIT化のコンサルティング
2) ハウスメンテナンスアドバイザー
3) レスポンスクリエイティブ
4) コーポレートプロフェッショナルアドバイザー
5) アミューズメントスタッフ
6) ドリームナビゲーター
7) 幹部候補生
正解は・・・
1) コピー機、オフィス電話機の販売
2) シロアリ駆除の営業
3) スーパーの折込チラシ制作
4) 損害保険の外回り営業
5) パチンコ屋の店員
6) 幼児用知育教材の飛び込み営業
7) ふつうの店員
です。別にこれらの仕事がブラックだといっているわけではありませんが、下段の表記のまま掲載するよりも、一見するとクリエイティブに見える上段のような横文字で表現することで、なんとなくイメージがよくなり、注目を引く効果は確実にあるわけです。しかし仕事の実態は見えにくくなってしまうため、入ってから「こんなはずじゃなかった…」といった後悔に繋がるリスクもありますよね。
Webサイトでも求人広告でも、ハッキリと「○○を売る仕事です」と記載されていない場合は要注意。募集に苦労し、離職率が高い会社や職種ほど、「○○コンサルティング」「マーケティング■■」「△△アドバイザー」といった横文字のカッコよさそうなフレーズを多用する傾向があります。このような「イメージの良い抽象的キーワード」が出てきたら「怪しい…」と感じるとともに、「商材は何か?」「誰を相手に、具体的に何をするのか?」といった点について納得いくまで確認することを強くお勧めします。
2-4:社名、代表者、業務内容や資本関係などが頻繁に変わっている
⇒「なかったこと」にしたい「都合が悪い事実」がある可能性があります!
もちろん、新規事業の進展や、マーケティング戦略の一環としての変更なら心配ありません。しかし数年に1度くらいのペースで、頻繁な社名変更や業態転換を行っている場合は大いに注意が必要です。
ブラック企業では「社名変更」や「社長交代」、そして「親会社が変わる」「どこかの子会社になる」「どこかと合併する/される」といったやり口は、「都合が悪いことを隠す」ためによく用いられる手段なのです。隠したい対象にもいろいろとレベルがあり、たとえば「ブラック企業というイメージを払拭したい」といった表面的なものから、「違法行為の摘発を防ぐため」といった悪質なものまで様々。いずれにせよ、何かしら後ろめたい理由がある可能性が高いので、「会社ぐるみで何か隠蔽したいことがあるのかも」と考えてみるのも有効でしょう。
2-5:「会社概要」の情報量がやたら少なく、経営者名がテキストではなく画像表示
⇒検索されてはまずい理由がある可能性が高いです!
一般的に、Webサイトの「会社概要」ページには、会社名、代表者名、取締役名、事業内容、設立日、資本金、売上高、沿革…といった情報が盛り込まれているものです。しかし、都合が悪い情報や突っ込まれたくない点は隠したくなるのが人の常。Webサイトに掲載されている資本金額や売上高が少ないと、自分から「全然儲かってないです!」と晒すことになりかねず、新規取引を検討する会社に対して不安を与えることにもなるでしょう。
ただ、中小企業であれば売上高を記載しないことは多いため、それ自体はさほど気にする必要はありません。悪意があるのは「経営者名がテキストではなく画像で表示されている」ケースのほうです。
お分かりのとおり、テキスト表示なら検索に引っかかりますが、画像だとそうはいかないのです。経営者名で検索されることで過去の犯罪歴など、何かしら触れられたくない情報とリンクしないように積極的な工作をおこなっている可能性が考えられます。
2-6:ネット上で「ブラック企業」との噂がたっている
⇒不満を持った社員が多くいる可能性があります!
ご存知のとおり、ネット上で社名検索すると、ブラック企業の場合検索結果1ページ目のトップ下(つまり、自社サイトの直下)あたりからブラックな噂が出てくることがあります。
また「関連キーワード」や「サジェスト」として「噂」「評判」「2ch」「苦情」「詐欺」、もしくはそのものズバリ「ブラック」といった文言が表示されているなら、それだけ当該組み合わせの検索が多くなされているわけで、問題だと認識している人が多いことの現われといえるでしょう。
ただし、検索結果はあくまで噂や疑惑レベルに留まりますし、口コミサイトやブログ記事なども「不満を持つ人があえて書き込む」傾向があるため、実態としてブラックかどうかはまた別問題。違法企業かどうかを知るなら、疑惑よりも実際の違反に目を向けておくとよいでしょう。検索するならば、社名に加えて「違法」「違反」「逮捕」「送検」「起訴」「裁判」「訴訟」「実刑」「処分」「指導」といったキーワードを合わせると、大手メディアでは報道されない意外な一面が見えてくるかもしれません。
3:「会社説明会」や「企業セミナー」で見極める!
3-1:メールや電話での案内が不親切
⇒顧客からの支持を失っている可能性があります!
相手がお客さんであろうと、求人への応募者であろうと、企業にとっては同じお客様であることに変わりはありません。応募した会社からあなたへの扱いに誠意が感じられない場合は、お金を払ってくれている顧客に対しても知らないうちに不興を買う行動をしている可能性があります。
・問い合わせに対する返答が遅い
・説明や案内がわかりにくい
・電話に出るのが遅い
・電話応対の印象がよくない
・丁寧に扱われていない印象
などといった感覚を抱いたら、「顧客に対しても同じような対応をしているかも…」「応募段階でこれでは、入社後はもっと扱いが適当になるかも…」と注意しておくことです。
3-2:人事担当者や社員の印象がよくない
⇒会社として深刻な問題を抱えている可能性が高いです!
そもそも会社説明会やセミナーとは、自社に対して好印象を持ってもらい、応募を促すために開催するもの。そこでネガティブな印象を抱かせてしまうこと自体が問題ですし、そういった会社はおそらく相当な課題を抱えているはずです。
たとえば「高飛車、威圧的な印象」を感じた場合、それはその会社の社風や人間関係の表れだと考えられますし、明らかに応募者に対して配慮が足りていません。さらに、「出てくる社員が応募者にネガティブな印象を与えているようだ」⇒「それは問題だ」、と気づける人や指摘できる人がいない、という組織の問題でもあります。また「社員が疲れている、無気力な印象」ならば、たかだか数時間の説明会中さえも繕えないくらいのハードワークや、人間関係などの問題が潜んでいる可能性がみてとれます。
あとは、「あなたとその組織の相性が合わない」という根本的な問題である可能性もあるでしょう。いずれにせよ留意するに越したことはありません。
3-3:給与や福利厚生などの待遇、休暇や制度など労働環境にまつわる質問を嫌がる
⇒質問者にとってネガティブな実態が存在する可能性が高いです!
求人サイトや就職マニュアル本では依然として「会社説明会や面接において、給与や休日に関する質問はNG」といったアドバイスが見られますが、まったく気にする必要はありません。そもそも「労働条件は募集時に求人側が明示するもの」と法律で決まっているのです。求職者にとっては大切な情報なので、遠慮なく確認すべきなのです。私としてはむしろ、そのような前時代的なアドバイスによって「給与や休日について胸を張って説明できないようなブラック企業をなぜ擁護するのか?」と大いに疑問です。
労働環境に自信がある企業なら、自社の給与水準や労働環境について自信をもって説明できるはずだし、「当社の育休復職率は100%です!」などと自慢さえするでしょう。逆にそんな質問程度で「やる気がないのか!?」などと逆上するような所は、満足な給与も労働環境も提供できない狭量な会社と判断してよいのです。(もちろん、待遇面「しか」興味がないし、質問もしない、というのは問題ですが…)
3-4:説明があいまい
⇒具体的に数字を挙げて説明できない理由があります!
会社説明会やセミナーは自分たちの会社をPRする場ですから、関わる社員は自社にまつわる数字を把握するなど準備して臨むもの。事業内容や売上高といった基本情報はもちろん、「有休取得率」や「月当たり平均残業時間」、「平均勤続年数」や「離職率」あたりは認識しているはずです。
しかし、それらのデータについて質問しても、明確な回答が返ってこない場合は注意が必要です。社内での情報共有が徹底していないか、社員自体も詳細を知らされていない、もしくは会社としてあえて出したくない、といった理由が存在している可能性が高いためです。
また、具体的な数字が示されなかったり、抽象的な表現であいまいにしたりする場合も怪しいと捉えてよいでしょう。たとえば、このような問答でわかってしまいます。
「残業はどれくらいありますか?」
○「月平均の残業時間は20時間を切っていて、遅くとも夜の9時には全員帰っています」
×「時期によっては、やってる人もいますね…」
後者の場合、この説明では残業がある「時期」の頻度が不明です。半年に1回程度なのか、ほぼ毎日なのか… また、「やってる人もいる」というのは、「1000人にひとり」でも「ほぼ全員」でも当てはまるし、具体的に何時間くらいの残業なのかも不明です。あいまいな回答には納得せず、細かく確認しておくべきなのです。
他にも同様に、
「休みは取りやすいですか?」
○「はい。土日は完全に会社が閉まってますし、有給取得率も100%です」
×「取りやすいほうですよ。自主的に土日出勤している人はいますが…」
後者の場合、仮にほぼ全員が土日に出勤しているなら「自主的に」休むことは難しいと考えていいでしょう。いずれにせよ、極力具体的に確認することを強くお勧めします。
3-5:選考に進むことを強要される/急かされる
⇒応募希望者が少ない、辞退者が多い可能性があります!
説明会やセミナーのあと、有無を言わさず面接や試験が行われたり、書類提出、選考参加を強要されたりする場合は要注意。
人事は、「採用目標人数」を持ちながら選考しているものです。ブラック企業であるほど辞退者や離職者は多いため、それを見越して採用人数も必然的に多くなります。説明会に足を運んだ人間は「少しでも興味や可能性がある候補者」扱いになり、なんとしてでも、一人でも多く選考のラインに乗せていかねばならない対象になってしまうのです。
その場で選考をおこなうことで、応募者に「この機会を逃すと不利になるかも」と思わせると共に、「この会社のことをきちんと調べてから応募しよう」という時間をなくさせ、判断材料を奪った状態で会社のペースに持ち込むことができるわけです。なぜか選考に進むように強く促されているように感じたら注意が必要です。
4:「会社訪問」で見極める!
4-1:標語やスローガン、棒グラフがたくさん貼られている
⇒目標達成へのプレッシャーが強い可能性が高いです!
これはマンガやドラマなどでもよく見られる光景だと思われますが、常に衆人環視のもとで結果を判断されることにプレッシャーを感じる人は避けたほうがよいでしょう。ただし、そこまでは想定の範囲内。注意すべきはグラフではなく「標語」や「スローガン」のほうです。
「気合で稼げ!!」
「やる気出せ!!」
「死ぬ気で必達!!」
といった気合重視、根性論系の文言が書かれていたら注意が必要です。おそらくそういった会社では、最終成果よりも「徹夜してやり切った」「週末出勤して頑張った」といった「頑張る姿勢」のほうに価値がおかれ、営業戦略もなく、社員個々の行動分析ができていない可能性が高いのです。当然ながらそういった会社では、営業活動全体についても感覚的な判断しかできないため、結果的に売れなかった場合、「商品力」や「売れる仕組み」の問題ではなく「営業担当者の気合が足りなかった」などと言い出しかねません。これはもっとも報われないパターンだといえます。
4-2:社長室がやたら豪華
⇒社長の自信のなさの裏返しである可能性があります!
社長室といえども仕事場です。にも関わらず、必要以上に豪華な調度品や骨董品、趣味の品が置かれているのは、社長が会社を私物化していることの表れといえるでしょう。
また、著名人と一緒の写真や色紙なども要注意。これらはいずれも、社長がそんな付き合いがあるクラスの人物であることを「自分で常に確認し」、「周囲に見せ付ける」ためのものでしかないのです。本当に根拠ある自信を持ち、仕事そのものに真摯に向き合っている人なら必要のないものであり、社長のコンプレックスや、自身の至らなさの表れであるかもしれません。
4-3:デスクで食事をとっている人が大勢いる
⇒ハードワークが常態化している可能性があります!
昼休みに外出せず、お弁当を自席で食べている人がいる… これが1人や2人程度であればよくある光景かもしれませんが、それが日常的、かつ多数みられる場合は要注意。ゆっくり1時間も休みを取れないくらい忙しい、もしくは休みをとることが許されないような社風の表れだと考えられます。
4-4:社員の印象や職場の雰囲気に違和感がある
⇒そもそも社風が悪いか、社員が抑圧されている場合が多いです!
定量化できない、抽象的な判断基準で申し訳ないのですが、オフィスに一歩足を踏み入れたとき、もしくは社員さんたちと話したときに「何となく違和感がある…」「生理的に合わない…」といった直感を得ることがあるかもしれません。仮に世間の評判がよい会社であっても、そこで働くのはあなた自身。そのような感覚は大切にしたほうがよいのです。あえて言語化すれば、このようなニュアンスになるでしょう。
・私語ひとつなく、物音を立てるのも憚られるようなピリピリした雰囲気
・活気も生気もない、ドンヨリとした雰囲気
・役員クラスから話しかけられた社員が明らかに萎縮している
・罵声や怒声、叱責などが漏れ聞こえてくる
・オフィスで出会った社員が挨拶をしない/返さない
・社員の態度や言葉遣いが悪い
こんな兆候を見た際には要注意。何かしらの問題を抱えている可能性を考えておくべきです。
5:「面接」で見極める!
5-1:面接官や企業側の対応に誠意が感じられない
⇒入社後の従業員や、顧客に対しても誠意がない会社である可能性が高いです!
・面接官が事前に応募書類(エントリーシート、職務経歴書など)を読んでいない
・面接官の態度が横柄
・学歴、性別、国籍や前職などに対して偏見、差別的、モラルを欠いた発言がある
・日程調整など、応募者の都合を考慮しない
…などなど、応募者とのあらゆる接点において、企業側に何かしら誠意が感じられない対応が見られた場合は要注意。これは面接本番に限らず、そこに赴く前のメールや電話による調整など、事前のコミュニケーションにおいても当てはまることです。応募者に誠意がない対応をする会社は、顧客に対しても知らず知らずのうちに誠意のない、無神経で失礼な対応をしている可能性が高いのです。
たとえば、一度面接が行われたあとの連絡ひとつとっても、企業側の姿勢が読み取れるでしょう。
(心配ない場合)
「選考結果が迅速に伝えられる」
「選考結果についての理由説明が具体的で明確」
「選考に時間を要した場合も、それに対するお詫びと説明がきちんとなされる」
「ある程度応募者の都合を考慮しながら、次回選考の日程調整が行われる」
(怪しい場合)
「面接後結果が出るのがやたら早い。もしくは、やたら遅い」
「選考結果に関する理由の説明がない」
「次回選考日程が『本日』とか『明日』など、応募者の都合を考えない設定」
対比するとよくわかりますが、「誰の都合を優先しているか」がポイントです。心配ない企業はあくまで応募者優先。一方でブラック企業は自社都合優先ということですね。
応募者といえども、いつその会社のお客さんになるかわからないものです。応募者に配慮がない会社は、細かいところまで気を遣うという意識がそもそも欠落しているか、そのような対応を徹底させるマネジメントが存在していない証拠といえるでしょう。まさに「神は細部に宿る」ということなのです。
5-2:アッサリ選考を通過してしまい、なぜ受かったのか分からない
⇒「頭数さえ揃えば誰でもいい」という使い潰し前提の会社である可能性が高いです!
・面接1回で即決
・5分程度の面接で即内定
・面接中は雑談ばかりで、自分の何を評価されたのか分からない
このように、ごく短時間の選考ですんなりと選考通過してしまう会社は往々にして、「もう誰でもいいから、人数さえ揃えばいい」と考えて力業で採用している会社である可能性が高いです。結局、あなたでなくてもよいし、入社後ついてこられなければ勝手に辞めろ、と同義ということなのです。
採用選考経験を相当に積んだ面接のプロであっても、応募者の人柄や能力を評価して見抜くには相応の時間を要するもの。応募者のエントリーシートや職務経歴書の内容は盛られているかもしれないし、面接時間中だけ性格を偽っている可能性もあります。だからこそ新卒採用では筆記試験、グループディスカッション、グループ面接、個人面接と多くの選考ステップがあるのだし、面接官は人事採用担当のみならず、現場で共に働くことになるメンバーや上司になる人など、様々な立場の人が選考に関わり、総合的に判断するものなのです。
正社員採用の場合、平均的な生涯賃金は2億~3億円とも言われます。いわば、定年まで約40年のローンで2億の買い物をすることと同じ。しかも、法律と判例があるため簡単にクビにはできません。そんな「高くてキャンセルしにくい買い物」をするのに、わずかな時間の面接でアッサリ決めきれるはずはないのです。
そう考えると、面接1回で即内定など余程のことがない限りあり得ないことがわかるでしょう。採用にあたって何の判断もせず、誰でもいいというスタンスの会社なら、入社後の状況は推して知るべしです。
しかし、就活や転職活動において複数の企業に応募し、残念ながら意中企業の選考が不合格だったり、軒並み通過しなかったりした人は、こういった「アッサリ内定を出す企業」にハマってしまいやすいので大いに注意が必要です。不合格が続くと自信を失い、自己肯定感も低下してしまいがち。そんなタイミングで一発内定が出てしまうとつい恩義を感じてしまい、「こんなダメな自分を拾ってくれた…この会社で頑張ろう!!」などと決意してしまうものです。これこそ、世の中にブラック企業情報が充分流布しているのに、相変わらずブラック企業に入る人が多い理由の一つであると確信しています。
5-3:他社選考辞退/内定辞退を強要される
⇒自社に後ろめたいところがあり、熟考させる時間を与えたくない意図が考えられます!
いわゆる「オワハラ」(就活終われハラスメント)です。自社からの内定出しの条件として他社選考の辞退や内定辞退を要求したり、内定を出した後に辞退を示唆もしくは強要したりすることですね。そこまで直接的な表現で要求しなくとも、選考期間や選考回数を必要以上に長期間・多数回にわたって設け、実質的に応募者を拘束することで他社選考を受けさせないといったパターンも存在します。
名の通った大手企業でもまだまだ行われていることで、企業側の「確実に入社してくれる人にしか内定を出したくない」という気持ちもわかるものの、あまりにしつこい場合や高圧的な場合や、「内定出すなら同時に他社辞退は当然だろう」といった応募者の気持ちに寄り添わない姿勢の会社は、入社後も同様の「そんな意図はなかった」的なハラスメントに遭遇する可能性が高いかもしれません。
5-4:募集時の記述と面接で提示された条件(仕事内容、雇用条件、待遇など)が違う
⇒遵法意識が低い、まさに文字通りのブラック企業である可能性が高いです!
「求人票では試用期間終了後は給与が上がると明記されているのに、面接では『売上次第で変動』と説明された」
「求人サイトには土日祝休と書かれていたが、『実際土・休は皆自発的に出社している』と言われた」
「残業手当有となっているが、みなし残業分が基本給込みになっており、実質ゼロだった」
このような、求人票や求人広告の「募集要項」に載っている情報と、面接時に説明される実態とに差異が発生する場合があります。いずれも、企業側としては好条件のように見せかけて人を集めておき、その場で翻すといういわゆる「求人詐欺」であることが考えられます。そのような企業はまさに遵法意識のないブラック企業であり、なんとしてでも避けるべきです。
法律上、求人募集にあたって虚偽記載をすることは禁じられており、罰則も存在ります。しかし厳密には、「労働契約締結後に条件が変わる」ことは違法であるものの、「募集時と説明時に内容が変わる」こと自体は違法ではないのです。したがって「求人広告を出した後に事情が変わったので、虚偽ではない」という言い訳ができてしまう、というブラック野放し状態にあるのが残念ながら現状なのです。
とはいえ、応募者を意図的に勘違いさせるような行為は不誠実であり、そんな対応を平気でおこなう悪意ある企業は決して選ぶべきではありません。
6:「入社直前」に見極める!
6-1:早期入社を急かされる/入社前に研修などで拘束される
⇒そうまでしないことには自社につなぎとめられない、何らかの理由があります!
新卒の場合なら、内定後、入社までの間に面談、研修、懇親会などの予定が頻繁に入り、拘束される。中途採用の場合は、入社を急かされる。このような場合も注意が必要です。
学生の場合、その会社に内定を得ていたとしても、正式に入社するまではまだ学生であり、本来は会社に束縛する権利はないはずです。しかしブラック企業は彼らを入社前に呼び、研修や懇親会をおこなうことがあります。これが3ヶ月に1度程度であればまず一般的なパターンといえますが、毎月、もしくはそれを上回る頻度でやっている企業は、何か「そうまでしないと定着しない」と考え、意図的におこなっている可能性が高いです。
一方、中途採用した社員を迎えるにあたり、必要以上に入社日を前倒しするよう急かす会社も要注意。一般的に、在職中に転職活動をおこない、どこかの会社に内定を得られたとしても、そこから勤務中の会社に退職手続をおこない、業務引継ぎなどに要する時間、そしてたまっていた有給休暇を消化する期間も考えると、どんなに少なく見積もっても1ヶ月、ふつうは2~3ヶ月は要するものです。それは採用側も重々承知しているはずですが、それでも「今の会社をすぐに辞めて、来週からでも来て頂きたい」などと、至極当然のように要求する会社が存在するのです。
民法上、退職申告から実際に退職までに要する期間は最短で2週間と規定されているので、それを根拠に言っていることはわかります。しかし、無理に退職を進めてしまうのは、本人と会社双方にとって好ましいものではありません。無理矢理辞めて業務引継ぎが不十分だったことで、「あの人は責任を果たさずに、組織を混乱させた上で辞めていった」などという噂になってしまっては元も子もないためです。しかしブラック企業はそんなことをまったく気にしません。むしろ
「もう辞める会社とこれから入る会社、どっちが大事なんだ」
「営業職なんだから、それくらいの交渉はしてもらえないと困る」
くらいのことを平気で要求してくることでしょう。一見正論のようにも聞こえますが、実際は遵法意識が薄い表れなのです。また、それくらい急に人が必要になるということは、直近で当該ポジションの人が辞めてしまったか、計画的な採用ができていない、などという事情も考えられます。あなたの意思に沿わない強要をしてくる会社は要注意なのです。
6-2:深夜や休日でもオフィスに明かりがついている
⇒ワーク・ライフ・バランスが確保できない可能性が高いです!
入社前であれば会社説明会や面接、事務手続などの機会にオフィスに赴く機会があるでしょうが、それはあくまで就業時間中。可能であれば夜遅くや、その会社のカレンダー上の休日に当たる日にそれとなくオフィスの様子を見に行ってみてください。中まで入る必要はなく、外から観察するだけで大丈夫です。
会社の終業時間後や法定休日にも関わらず明かりがつき、普通に仕事をしている様子であれば要注意。それだけ時間外労働が常態化しているのかもしれません。たまたまその日が繁忙期なのかもしれないので、できれば時期をずらして見に行ってみてもよいでしょう。いつ行っても仕事中の様子なら、そういう会社だということです。
6-3:入社日近くになっても連絡が来ない
⇒組織マネジメントが機能していない可能性があります!
本来、入社前には詳細な情報が伝えられるものです。
「出勤日」
「出勤時間」
「出勤場所」
「初出社時の訪問先」
「当日までに準備しておくこと」
「持参物」
しかし、こちら側から催促しないと連絡が来なかったり、不十分な情報しか伝えてこなかったりする会社があります。重要な連絡ができていないということは、何かしら人事機能やマネジメントに問題を抱えていることが考えられるでしょう。
また誰でも、新しい会社に入るときには不安があるもの。その気持ちを考慮できず、フォローができていないということは、顧客に対しても同様に気配りが足りない、という可能性もあります。重々注意したほうがよいでしょう。
さらに詳しく知りたい人は…
「ブラック企業撲滅完全マニュアル(1)ブラック企業の見抜きかた/見分けかた」