求人紹介や転職にまつわるアドバイスのみならず、転職活動全般のサポートや調整を一手に担ってくれる転職エージェントは頼りになる存在です。とくに、転職活動に充分な時間を割けないブラック企業勤務の人にとっては不可欠ですよね。
しかし、転職エージェントは数が多いばかりに、中にはサービスレベルが低い会社があったり、大手で有名なエージェントでも、担当するキャリアアドバイザーのレベルが低かったり、あなたと相性が合わない、などということがあります。
エージェントの見極めは、転職先の会社の見極めと同じくらい重要なのです。今回は、転職エージェント選びで失敗して無駄な時間や手間をかけないためにも、「ダメな転職エージェントの見極め方」をアドバイスしていきましょう。
1:面談が「流れ作業的な求人紹介のみ」
「キャリアアドバイザー」「キャリアコンサルタント」といった肩書で活動している限り、本来のアドバイザーの仕事は、相談に訪れた求職者の、現職への不満や将来の不安に耳を傾け、彼らのキャリア構築についてアドバイスをすることにあるはずです。
一方で、転職エージェントの収益源は、求人企業に転職希望者を紹介し、入社に至ることで発生する「人事コンサルティングフィー」という名の手数料収入です。これは転職者の初年度年収の30%前後にものぼるため、転職エージェントとしては転職希望者を効率よくさばいて、多数寄せられている求人に当てはめ、早く転職してくれるほど利益が生まれるということになります。
必然的に、転職希望者1人ひとりに避ける時間を極力減らし、ひたすら求人情報を紹介し、大量に応募させ、受かった所に決めさせることができれば、エージェントにとっては手離れよく高収益が実現できるわけです。
残念ながら、転職希望者個人の想いに向き合わず、そのような流れ作業的な紹介だけに終始する、サービスレベルの低い事業者が存在するのも事実です。まずは初回面談時、エージェント担当者があなたの話に真摯に耳を傾け、親身になって寄り添おうとしてくれるか、よく観察しましょう。
「真摯に聴く、親身になるなんて当たり前じゃないの!?」
と思われるかもしれませんが、転職エージェントのビジネスモデルを考えると、「カウンセリングだけではお金にならない」のです。親身な担当者に巡り合えただけでも「当たり」と捉え、そうでない担当者は変更を申し入れるか、良い担当者に会えるまで複数のエージェントに登録してみるとよいでしょう。
2:あなたの選択を否定し、不安を煽り、退職や転職を急かす
悪質な転職エージェントは常に「自分目線」です。自社の売上さえ確保できればよく、究極的にはあなたのキャリアなど知ったことではない、という考えなのです。
彼らは日々ノルマに追われ、あなたという人と向き合う余裕がありません。当然、あなたの気持ちに対しても鈍感であるため、「新卒で○○に入っていればよかったのでは」「あの時辞めるべきだったのでは」などとあなたがこれまでとってきた選択を否定し、他に相談しているエージェントや受けている会社についても「あのエージェントは評判が悪い」「□□はブラック企業」などと貶める発言を平気でしてきたりします。
またあなたが今すぐの転職を考えておらず、「長期的に検討する」といった姿勢だとしても、場合によっては「この求人は今しか応募できない」「いずれ辞めるのなら早い方がいい」「内定が出たならすぐに受諾しないと取消になる」などと、不安を煽る形で急かしてくる担当者がいたりもします。
しかし転職活動は、人生を左右するくらい大きな意思決定。下手に焦った状態で決断してしまったら、後悔してもしきれません。取り返しのつかないことにならないよう、納得できる意思決定ができるように、あなたの不安や疑問に寄り添ってくれる担当者を選ぶべきなのです。場合によっては、「あなたは今転職すべきではない」という判断を伝えることも必要なのですから。
優秀なエージェントほど、求職者の気持ちに寄り添い、後悔のない意思決定ができるようにサポートしてくれます。ましてや、企業側の都合に合わせてあなたを急かすことなどないはずです。
3:紹介してくる求人情報が希望とズレている
「カウンセリングしてるんだから、その時ヒアリングした希望条件に合った求人を紹介されるのも当たり前じゃないの!?」
と思われるかもしれませんが、残念ながら、確かに伝えたはずの希望条件に合わない求人を紹介されるケースは多々あります。
これも理由は1-1と同じです。転職エージェントのビジネスとして、どこであれ早く転職が決まってくれたほうが助かるので、数打ちゃ当たるとばかりに、「現在積極採用していて内定が出やすい会社」や「採用ハードルの低い会社」などをダメモトで紹介するということが起こり得ます。あわよくば興味を持ってくれて内定したらラッキー、くらいに考えているわけですね。結局そのようなエージェントは、あなたのキャリアよりも自社の利益を優先しているのです。
もちろん、カウンセリングの中であなたの出した希望条件が高望みすぎたりした場合、現実的な条件を満たすために少々軸をずらすような提案がなされることはあります。そんな時はアドバイザーもあなたの了承を得たうえで、あくまで前向きな提案として進めていくので問題ありません。
一方で、アドバイザーが出してくる求人情報があなたの希望に沿っていなかったり、アドバイザー側のゴリ押しであったりする場合は、遠慮なく「希望と違う」と伝えて拒否してください。その上で改めて希望条件を共有し、妥協することなく、あくまで希望条件に合致した求人に絞って応募していくことをお勧めします。
4:求人情報の詳細や、求人企業について詳しくない
転職エージェントは求人情報を提供して転職サポートすることを生業にしているのですから、本来は求人企業や求人について詳しい情報を保持し、求職者に提供できるはずです。実際、優秀なエージェントであれば企業側から信頼を獲得し、太いパイプも築けているので、募集背景や職場の実態、企業の将来像、当該ポジションのキャリアパス、どんな人が向いているか、なぜあなたにこの求人を紹介するのか…など、ポジティブ・ネガティブ双方の詳しい情報を保持しています。
逆にいえば、あなたがそれらについて担当者に質問したとき、充分な情報が返ってこなければ、そのエージェントは求人企業と深い関係を築けていないか、担当者自身の勉強不足か、その両方かもしれません。お互いにマッチするところがよく分からないまま紹介されたところで、あなたにも紹介先企業にも良いことはありません。提供される情報が薄く、質問にも充分回答できないようなエージェントとは距離を置いていきましょう。
あなたがサービスを受ける立場で、納得できないことがあったり、違和感を抱いたりしたまま安易に転職先を決めてしまうと、あなたにも転職先企業にとっても不幸になってしまいます。
これらのような特徴が見られたら、すぐにそのエージェントから離れることをお勧めします。担当者を変えてもらうことで改善する可能性はありますが、同じ会社である以上、誠意のない対応やクライアント企業との関係性は、他の担当者もあまり変わらないかもしれません。活動初期段階から複数のエージェントに登録しておき、もっと親身で企業との信頼関係も確実に構築できているエージェントとともに活動を進めていきましょう。