トラブルQ&Aコーナー

Q
契約社員として働いていましたが、期間満了に伴って退職する予定です。引継ぎも済ませ、有給休暇がだいぶたまっているはずだったので最後にまとめて取ろうとしたら、「契約社員は退社時にまとまった有休取得はできない」と言われました。そんなはずはないと思って再度確認しましたが、こんどは「今忙しい時期なので、そんなに休まれたから困る。これは会社に認められた時季変更権だ」という理由で拒否されました。そんなことってあるのでしょうか…
A

実に悪質な会社ですね。最近ようやく広く知られるようになってきましたが、契約社員はもちろん、パートでもアルバイトでも、勤務日数や勤務時間が短く契約社員はもちろん、パートでもアルバイトでも、勤務日数や勤務時間が短くても、誰でも有給休暇はとれます(※勤務開始後半年の間に、勤務すべき日の8割以上出勤している場合)。有休は労働者の権利なので、取得させないのは労基法違反です。
業務引継ぎも終わっていて仕事に差し支えないのですから、最後にまとめて有休取得することも問題ありません。
確かに、会社側は業務都合を理由に有休取得時季を変更させる権利がありますが、これは「他の時季に有休をずらす」ための手段なので、退職する人に「ずらせる日」はありません。そもそも変更権が認められるのは、その人に休まれてしまっては「事業の正常な運営を妨げる場合」のみなので、期間満了に伴う退職であればあらかじめ人員計画にも織込済のはずですから、「休まれて困る」などとはとても言えないはずです。積極的に有休消化しましょう。

Q
慢性的に人手不足の会社で、尋常ではない多忙に耐えられなくなり転職を決意しました。幸い希望の労働条件の会社から内定を得て、報告を兼ねて退職報告をしました。すると上司は激高し、「これまでお前の教育にどれだけ金をかけたと思ってるんだ!?それもこんな忙しい時期に退職とはふざけるな!!教育研修にかかった費用と、後釜の社員を採用・教育する費用を損害賠償として請求する!!」と言うんです。でも、教育といっても一般的な新人研修のようなものですし、社員の採用も常にやっています。私がそのお金を払わないといけないのでしょうか…
A

A.実に悪質な会社ですね。しかし心配することはありません。「お前が辞めたら損害賠償を請求するぞ!」というのも、「辞めるなら後釜を見つけろ!/採用費用を払え!」などというのも、ブラック企業経営者がよく使う稚拙な脅しでしかありません。原則として認められない話なので、あなたが損害賠償を支払う必要などないのです。
確かに、「在職時に会社負担で海外留学に参加した者が、帰国後5年以内に退職した場合は実費費用の返還を求める」といった規定は目にすることはあります。しかし、全社員対象に業務の一環としておこなわれる研修費用などは当然返還する必要はありませんし、そもそも実費を請求する場合でも、その旨をあらかじめ雇用契約を締結する時点で定めていないといけません。そのような根拠もないのに、損害賠償を請求することはできないのです。

そして実際のところ、仮に雇用契約や就業規則などに返還規定があったとしても、労基法に以下の規定があるため、基本的に損害賠償請求は無効となります。

労働基準法第16条

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

これは社員都合で退職する場合に、違約金や損害賠償の請求を、あらかじめ雇用契約に盛り込んではいけないという決まりです。当然、あなたの退職に際して思いつきで言い出したような「損害賠償請求するぞ!」は無効ですからご安心ください。

Q.以前働いていた会社を体調不良で辞めました。当時は、長時間労働や厳しい指導

などについて「会社ってこういうもの」と考えていましたが、私なりにいろいろ

調べてみた結果、体調不良の原因は当時の上司のパワハラであると考えるように

なりました。辞めてから5年経っていて、証拠などもないのですが、上司を訴え

ることは可能でしょうか。また、慰謝料はどれくらいとれるものでしょうか。

A.実に悪質な会社ですね。不本意なご経験をされ、さぞ腹に据えかねる思いをお持

ちのことと思います。

今般頂戴した情報だけを基に先に結論からお答えすると、「上司を訴えることは

できるが、あなたが納得できるような判決を得ることは難しい」です。順番に

論拠をお伝えします。

訴えるとしたら、パワハラを与えた上司と、それを看過した会社を相手にする

ことになりますが、パワハラ行為にはそれぞれ該当する罪が民事・刑事双方に

ありますので、どのような被害を受けられたかによって攻め方と時効が変わり

ます。

刑事事件化するのであれば傷害罪が10年、暴行罪3年、脅迫罪3年、名誉毀損

罪3年、侮辱罪1年等(公訴時効)があてはまります。また民事上の責任を

追及する場合、不法行為責任であれば3年、会社の安全配慮義務を問うので

あれば10年が時効になります。したがって、5年経過しているとなると、時効

によって訴えられないものも出てきてしまいます。

そして今回いちばん困難なのは「証拠がない」というところです。具体的には、

次のようなものが証拠になり得ます。

・パワハラ行為を録画・録音した記録

・暴言が記録されたメールや文書

・理不尽な人事的処遇が通達された際の書面

・パワハラを実際に見聞きしていた周囲の人の証言

・パワハラが原因で心身の状態に問題が生じた際の診断書

・パワハラの詳細が記載された日記や業務日報、メモ書き 等

そのうえで、パワハラが不法行為であることを証明するためには、以下の要件を

満たしているかどうか「証拠を基に」見極めていく作業をしなくてはなりません。

・故意または過失のある行為であること

・他人の権利または法律上保護される利益を侵害したこと

・損害が発生していること

・行為と損害との間に因果関係があること

立証責任は原告側にありますので、証拠がないと訴え出ることが難しくなります。

また裁判費用と弁護士費用も、請求する慰謝料によって変わるものの大体50~

100万円かかってしまいますので、慰謝料と差引ゼロになってしまう可能性も

あります。

Q.5日間の有給休暇取得が義務化されましたが、私の勤めている会社では昨年の

平均有休消化日数は4日でした。

 そこで社長から「有休消化しないと会社が罰金を払わなきゃいけない!従って、

夏季休暇と年末年始休暇を有休扱いにする!」と発表がありました。もちろん、

これまでは有休とは別扱いの休みだったので、自由に使える有休が減ってしまいます。

社長からは、合意書にサインしないとクビだと迫られていますが、有休は自分の

権利だと思いますので納得できません。これは違法ではないでしょうか。

A.実に悪質な会社ですね。労働者の権利をないがしろにし、しかも退職を迫るとは

とんだブラック企業です。

そもそも平均有休消化日数が4日は明らかに少ないです。取得させないような

圧力があったり、取得をためらわせるような雰囲気になっていたりするならば

その時点で違法性が高いといえます。

年間の有休日数が変わらないままで、夏季休暇と年末年始休暇が有休扱いになる

ということは、実質的に自由に使える有休日数が減ることになり違法です。会社

側が無理強いすることはできませんし、「サインできないやつは辞めろ」という

なら退職強要ですね。労基署に申告すべき事案です。

細かいお話になりますが、ただ1点例外があります。有休義務化には合法的な

抜け道があり、「有休支給日数を増やして、増加分を夏季休暇or年末年始休暇に

充てる」のは問題ないのです。たとえば、これまで「有休年間10日+夏季休暇

5日」だったところを、「有休を年間15日に増やす。ただし、うち5日は夏季

休暇に充てる」というやり方ですね。これは有休日数がプラマイゼロで減って

いないので合法です。パワハラみたいなことをいう会社がそこまで考えている

かどうか不明ですが、署名拒否時にはその点だけご確認ください。

Q. 私は正社員のエンジニアとしてある企業に入社して仕事を続けておりましたが、

 会社の業績悪化に伴い、社長から突然「来年1月から業務委託契約にしたい」と

 一方的に通告されました。私としては、正社員だからこそこの会社に決め、雇用

契約書もきちんと結んでいるのに、会社の一方的なやり方に納得いきません。

しかし会社側は「業務委託といっても、給料も仕事も正社員と何も変わらない。

キミにはこれまで通り、同じように仕事をしてもらう」「むしろ、給与テーブルの

縛りがなくなるから年収アップの可能性もある」と良いことばかり言い、あくまで

業務委託にしたいようです。これは違法ですよね?もし裁判に訴えた場合、

勝てる見込みはあるのでしょうか。

A.実に悪質な会社ですね。一度正社員採用しているのに業務委託への変更とは、

かなり無理を通そうとするブラック企業のようです。

会社側の甘い言葉にほだされて、業務委託への変更をウッカリ合意してしまうと

大変なことになるところでした。ご存知の通り、一般的に「業務委託」と呼ばれ

る「請負契約」や「準委任契約」は、会社と雇用契約を結ばず、指揮命令を受け

ずに自由に仕事をし、その成果物や業務処理に対して報酬が支払われる形態です。

フリーランスで働く人にとっては自由度があって良いのかもしれませんが、一方

で労働基準法は適用されず、社会保険料の支払いや確定申告は自分でやらないと

いけないし、報酬も保証されているわけではありません。同じ業務量で同じ報酬

なら、社会保険料の出費で確実に手取りは減ってしまいますし、そもそも仕事の

進めかたまで同じということであれば、会社からの指揮命令に従って仕事をする

ということであり、それではいわゆる「偽装請負」になってしまいます。

まずは最寄りの労基署に申告なさってください。明らかに会社に非があると認め

られることでしょう。

そしてもし裁判に訴える場合、どのような手法で戦うかは弁護士さんによっても

判断が異なるでしょうが、一般的には「不当解雇」が論点になろうかと思います。

ただその場合の慰謝料はさほど高額ではなく、過去の判例では大体15万円~100

万円くらいの幅です。100万円以上になるケースは少なく、30万円~50万円程度

に落ち着くことが多いです。

とはいえ裁判を戦うとなると、お金も時間もエネルギーも要してしまいます。

解雇無効と正社員への復職を目指されるのであれば、裁判よりも迅速に解決が

図れる「労働審判」をお勧めします。労働審判は労働審判委員会の主導でおこ

なわれる、原則として3回以内の期日で労働問題の解決を目指す制度です。

 しかし私個人の意見としては、従業員の都合も考慮せず、一方的に業務委託に

 してしまうような会社に復職してもあまり将来に期待が持てない感もあります。

 労働審判なら復職希望が通らなくとも、合意退職の形にして会社から解決金を

 支払わせる、という展開にもできますので、まずは労基署の意見を踏まえて

 考えてみられては如何でしょうか。

Q. サービス残業が横行する会社をようやく辞められることになりました。

 ついては退職金がわりに、これまでの未払い残業代をすべて回収してから

 辞めようと考えているのですが、会社側も意図的にやっているのか、証拠と

 なるような資料がほぼないのです。

 まず、タイムカードが存在しません。残業の指示は口頭でなされるため、

 メールや文書など形で残っているようなものはなく、録音もありません。

 給与明細にはその月の稼働時間が書かれてはいますが、タイムカードがない

 ので、9時~17時のいわゆる定時が印刷されているだけです。辛うじて証拠

 的なものがあるとすれば、パソコンの操作時間のログが残っているくらいで

 しょうか…

 このような状況で未払い残業代を請求できるのでしょうか。今から何かほかに

 できることはありませんか。

A.実に悪質な会社ですね。不払い残業をさせておきながら、意図的にその証拠を

とられないようにしているところが狡く、悪意を感じます。ぜひ労基署に申告

して、会社から残業代を支払わせましょう。

ただ大前提として、労基署にできるのは「会社に法律を守るよう指導する」

ところまでで、代わりに残業代を請求したり、回収したりしてくれるわけでは

ありません。最終的にはご自身で直接会社と交渉するように促される可能性も

ありますので、もし確実に回収されたいのであれば、労基署と合わせて弁護士等

にも依頼することを検討されるとよいでしょう。

その場合、着手金として30万円前後、成功報酬として請求額の20%程度を弁護

士に支払う必要があるため、回収可能金額とのバランスでお考え頂く必要が

あります。

残業代請求は請求側が立証しなければなりませんので、在籍されていた全期間

における証拠を可能な限り集めて頂く必要があります。PCのログデータは証拠

になるので確保しておいてください。その他必要なもの、証拠として有効なもの

は次のとおりです。

・労働契約の証拠

⇒労働契約書、雇用通知書、就業規則のコピーなど

・残業していた事実を証明する証拠

⇒上司からの残業指示メールや録音、日報、業務完了報告メールやLINE通信

記録(送信時間が分かるもの)

・時間外労働していたことが分かる客観的証拠

⇒タクシー領収書、交通系ICカードのログ、オフィス内で撮った写真(時計

など時間が分かるもの)、PC画面のスクリーンショット(時刻が映っている

もの)、会社アカウントから送信し、自身のPCや携帯に残っているメール

履歴など

いずれも原本があればよいですが、なくてもコピーや「原本を撮影した写真」

でも大丈夫です。証拠は質よりも量が大事で、「何かの役に立つかもしれない」

と思われたものは全て確保しておくとよいでしょう。

Q. 年末で辞めようと上司に辞意を伝えたのですが、強く慰留され辞めさせて

もらえません。最初は「退職届は受け取れない!」と言われる程度だったの

ですが、私が食い下がって辞めると言い続けたために上司の態度も硬化し、

ついには「どうしても辞めると言い張るなら懲戒解雇扱いにするぞ!離職票も

出さないからな!!」と逆上されてしまいました。

普段の業務が多忙なため、転職活動の時間も確保できておらず、しばらくは

失業手当を受給しながら活動しようと考えていましたので、離職票がないと

困ってしまいます。どうすればよいのでしょうか。

A.実に悪質な会社ですね。「辞めさせない」というのはブラック企業の常套手段

ですが、懲戒処分を持ち出すなど脅迫です。長居する必要はありません。

結論から申し上げると、「懲戒処分」も「離職票を出さない」のもいずれも

無効ですからご安心ください。

そもそも懲戒処分というのは、上司や経営者の思い付きでいきなりできるもの

ではないのです。まず就業規則に「懲戒解雇という制裁を設ける」と規定した

うえで、「社員がどんなことをしたら懲戒解雇になるのか」という条項を細かく

設けなくてはいけないからです。しかも一般論として、懲戒解雇に該当するのは

「罪を犯して逮捕・起訴され、刑事罰を受けた」とか「無断欠勤が2週間以上

続いた」といった問題行動レベルであり、単に「退職したいと言った」など、

何の制裁にも当たりません。

また離職票がなければ失業手当を受け取れなくなるためご心配のことかと思い

ますが、これについても心配はいりません。まずはハローワークに行って相談

し、ハローワークから会社に対して離職票を発行するよう促してもらえばよい

のです。そもそも会社には離職票を発行する義務があるので、ハローワークから

の指導には従わざるを得ませんので。

もしあなたの会社がそれでも離職票を発行しないブラック企業だったとしても

大丈夫です。その際はハローワークの職権で離職票を発行してもらうことが

できますので、退職届を内容証明で送付した際の控えをハローワークに持参

するか、あなたが被保険者でなくなったことの「確認の請求」をおこなって確認

がとれれば、ハローワークが離職票を交付してくれます。

Q. 私の会社は常に忙しく、長時間労働が常態化しており、お昼も満足にとれない

 状況です。TVドラマなどで、同僚と連れ立ってランチに外出する光景をよく目に

 しますが、私は今までそんな経験は一度もありません。だいたい朝コンビニで

 買った軽食か、事務所近くの弁当屋かキッチンカーで買った弁当をデスクでとる

 くらいです。先日、たまたま昼時に友人が近くにいることが分かり、一緒にラン

チをとるため外出したところ「何無断外出してるんだ!!」と怒られてしまいまし

た。これっておかしいことでしょうか。

A.実に悪質な会社ですね。とはいえ残念ながらそんな会社が多いのも現実です。

法律で厳密に定められた「休憩時間」をよく分かっていない経営者や上司が

多いのでしょう。

職場における休憩時間は、労働基準法第34条できちんと定められています。

具体的には、労働時間が「6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分」、

「8時間を超える場合は少なくとも1時間」の休憩を与えなければならないのです。

しかもこの休憩時間の扱いは厳密であり、休憩時間中は労働者が自由に時間を

利用できる状態にあることが大原則となっています。従って、昼休み中に電話

番や来客対応を命じられる場合、それをおこなっている時間は休憩時間には該当

しません。もし会社がそれらに要した時間の分だけ休憩時間を延長せず、結果的

に上記の法律で定められた休憩時間に満たなかった場合は、その時点で労基法

違反となります。

そして、休憩時間中にも関わらず電話番や来客対応などを命じられた時間につい

ては「労働時間」として別途残業代などを請求できるということになります。

ちなみに休憩時間中の外出を許可制にすることについては、保安上の理由等が

あれば合法です。しかし、原則的は外出も自由であるという法の主旨を考えれば、 

「許可制」よりも「届出制」くらいに留めておくほうが望ましいといえるでしょう。

Q. 私が以前勤めていた会社はパワハラが酷く、残業代不払いも日常茶飯事でした。

 ようやく転職先が決まり、社長に未払い分の残業代の支払いを求めましたが、

「訴えてくるならこちらも弁護士に任せる」と気にもしていない様子でした。

不払残業代は直近の3年間で少なくとも300時間分はありましたが、これは裁判

で訴えないと取り返せないものなのでしょうか。あいにくお金も時間も無いので、

裁判は今のところ考えられません。同じような被害に遭った方たちは泣き寝入り

しているのでしょうか。

A.実に悪質な会社ですね。結論から申し上げると、「裁判沙汰にしなくても、未払

金の請求は可能」ですからご安心ください。

ただご存知のとおり、未払いの給料を請求できるのは「3年」という時効※があり、

それを過ぎてしまうと二度と取り返すことができなくなります。まずはその

時効を止める手続きをしなくてはいけません。

(法改正により、2020年4月1日以降に支払日が到来した賃金請求権(残業代

請求権)の消滅時効期間は、3年に変更となりました。2020年3月31日までに

支払日の到来した賃金請求権(残業代請求権)については従前のとおり、消滅

時効期間は2年のままです)

時効を止める方法には「催告」「労働審判申立」「訴訟提起」の3つがあります

が、訴訟は仰る通りお金も時間もかかって現実的ではないので、取り急ぎ

「催告」で時効を半年間止めるところからやりましょう。

「催告」とは、会社に「内容証明郵便」を送ることです。これは差し出した日付、

差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を日本郵便が証明

してくれるもので、郵便局で簡単に送ることができます。郵便局という第三者が

届けたことを証明してくれるため、会社は「そんなもの届いていない」と無視

することができなくなります。そしてこれを送付することによって、手続の

翌日から半年間は、時効を停止することができます。内容証明の例文はネット等

で検索可能なので調べてみてください。

内容証明郵便によって会社に未払給料の請求をすると、それだけで相手が支払

に応じることもあります。また、どうしても話し合いでは解決できない場合には

法的手段に訴えていくことになりますが、内容証明郵便による請求書は、その際

の証拠として利用することも可能です。

あと、内容証明を送るにも、今後法的手段に訴えていくにも、まずは在籍時に

どのような労働条件になっていたのか、本来得るべき金額がいくらであった

のかを示す証拠が必要です。以下のものなどが証拠になります。

・雇用契約書

・労働条件通知書

・給与明細

・給与口座の取引明細(通帳)

・源泉徴収票

「本来の給料の金額を示す証拠」と「実際に払われた給料の金額を示す証拠」を

比較して、実際に払われた給料の金額が少なければ、未払になっていることが

証明できるというわけです。

次に、あなたが会社で労働していたという実態を示す証拠が必要です。以下の

ものなどが証拠になります。

・タイムカード

・会社のパソコンの利用履歴

・業務日報

・メール・FAXの送信記録

・勤務シフト表

・手書きの勤務時間・業務内容の記録

・残業時間計測アプリ

・家族に帰宅を知らせるメール

これらの証拠については、会社が証拠隠滅しないよう、パソコンからデータを

ダウンロードしたり、シフト表や日報は写真に撮るなどして保存しておきま

しょう。

それでも会社が支払わない場合は、「労働審判」を申立てることをお勧めします。

これは裁判よりも簡易的、かつ短期間で終えられる手続きです。裁判所に行き、あなたと会社、裁判官などの専門家で事実関係を確認し、支払いの必要性や金額

を決定します。労働審判の申立てをすることで時効はリセットされますので、

2年間は残業代が消滅することがありません。労働審判申立に必要な書類は

以下の通りです。

・申立書(申立の趣旨・理由などを書く書類)

・会社の商業登記簿謄本または登記事項証明書

・雇用関係についての証拠書類

これらの書類の準備には専門的な知識が必要ですので、実際に労働審判を申立

する場合のみ、弁護士に依頼するのがお勧めです。

Q. 今働いている会社は、入社当時は「勤続5年目から退職金がもらえる」という

決まりだったのですが、少し前にその期間が「勤続10年目から」と変更に

なったようです。私は今年の4月で勤続5年目に入るのですが、10年目まで待た

ないと退職金はもらえないのでしょうか。

A.実は退職金の支払いについては、法律上義務づけられたものではないのです。

支払われるかどうかは、あなたの会社の就業規則や、労働協約などに支払の根拠

があるかどうかによります。

就業規則や労働協約をご確認頂き、そこに「退職金を支給する」といったことや

「支給基準」などが明確に定められている場合は、労働基準法の規定によって

退職金請求権があることになります。

その場合、就業規則に書かれている「対象労働者の範囲」、「退職金の決定・

計算・支払方法」、「退職金の支払時期」に従うことになりますので、会社側が

単に口頭で「支給は勤続10年目から」と言ったとしても、就業規則では「勤続

5年目から」と明記されたままであれば、就業規則の規定が優先することになり

ます。ということは、就業規則も決まりに合わせて「勤続10年目から」と変更

されているなら、それに従う必要がある、ということになります。

ただし、就業規則を変更した場合は労働者に周知し、合意されなければならない

という決まりも一方で存在します。今回、退職金支給開始時期について変更当時

に知らされていなかったのであれば「不利益変更」と判断される可能性もあり

ますので、もし社内に労働組合があるなら、相談されてみるとよいでしょう。

実際、退職金規定が存在しなかった会社でも、退職者に慣行として退職金を

支払っていた場合は、会社に対して請求できます。今回も、「これまで慣行的に

5年目から退職金が発生しており、就業規則の変更も知らされていなかった」と

交渉すれば、会社側も何かしらの対応をしてくれるかもしれません。

Q.新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で、当社も休業を余儀なくされ、

売上は大幅減となっている状況です。緊急事態宣言前には当社でも採用活動を

おこなっており、幾人か内定を出した人もいるのですが、この調子では採用・

受入できるかどうか不明な状況です。内定を取消すことはできるのでしょうか。

A.           大変な状況とお察し致します。同様の状況に陥られている企業やお店もあろう

かと思いますが、新型コロナによる経営難を理由とした内定取消は「整理解雇」

と同様の状況となるため、助成金等を活用した雇用維持を大前提として考えて

頂き、もしおこなうとしても、他の手段をすべて検討したうえでやむを得ない

場合に限るべきです。

法的に「内定」は「すでに労働契約が成立している状態」と解釈されますので、

「内定取消」は「解雇」と同様の位置づけとなります。そして解雇を実施する

ためには、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が要求されることと

なります。

経営不振や業績悪化など、経営上の理由に基づく人員整理としておこなわれる

解雇は「整理解雇」となり、判例上

  (1)人員削減の必要性

  (2)解雇回避努力(内定取消回避のための経営努力をしたか)

  (3)人選の合理性

  (4)手続の妥当性

 が問われることとなります。順番に詳しくみていきましょう。

(1)    については客観的な経営状態が判断されます。具体的には、現預金・借入

の多寡、資金繰り・融資の見通し、営業継続見込、毎月の固定費額など

です。この段階で余裕があれば、解雇は非合理的ということになります。

(2)    はどれだけリストラ(経営合理化)に向けた努力をしたかを問われます。

具体的には遊休資産の売却、役員報酬削減・返上、非正規雇用の見直し

などです。今回は内定取消なので問われませんが、既存正社員の解雇も

含めるなら希望退職を募集したかどうかも判断材料になります。

を含めたリストラ状況が問われます。通常、正社員に対する整理解雇では希望退職募集の実施状況が問われるところですが内定取消については希望退職募集を行うことは必須ではないでしょう。とはいえ、内定取消よりも、内定辞退として話し合いによる合意を選択する場合もあるでしょう。また、政府が特例を用意している雇用調整助成金は新入社員も対象になるため、次のQで述べる入社延期(休業)も検討することが必要と言える状況です。

(3)    内定者全員を対象とした整理解雇であれば本件は対象外ですが、ある人は

内定継続、別の人は内定取消、といった選別をするならば、採用職種や

保有資格・能力の有無など、客観的に説明可能な基準によりおこなわなく

てはなりません。

(4)    本当に手段は内定取消しかないのか、充分に検討が必要です。入社延期を

依頼したり、雇用調整助成金を得て研修をおこなったりするなど、他にも

方法があるかもしれません。また一方的な取消ではなく、話し合いによって

合意を得る形で「内定辞退」という形とし、可能な限りの補償を用意する

など、方法を探ることも必要です。

このように、考えうるあらゆる手段を検討したうえで、本当に内定取消しかない

のか、よくよくお考え頂くことをお勧めします。短期的には固定費が削減されたと

しても、採用市場において「あの会社は内定取消した」という評判は後々もついて

回ることになるでしょう。

Q. ガールズバーに勤めています。コロナの影響でお店を閉めていましたが、よう

やく再開して私も店に戻りました。しかし、営業自粛の影響でお店にお金がない

らしく、以前の給料や残業代が払われていません。こんなときはどのようにすれ

ばいいのでしょうか。

A.           コロナで業界全体が大変だったのは分かりますが、働いた分のお金をきちんと

払わないのはダメですね。やり方を説明しましょう。

請求は大きく分けて「ご自身でやる」か「弁護士に委せる」方法があります。

自分でやる場合は、お金がほとんどかからないメリットがある一方、自分自身

が前面に出て相手側と交渉しなければならず、心労に加えて手間とエネルギー

がかかるリスクがあります。弁護士に依頼すれば交渉をすべて任せられるので

手間も負担もかからず、取り返せる確率が高くなる一方で、一定の費用がかか

るデメリットがあります。どちらで進めるかは貴殿のご判断です。ちなみに

弁護士選びも大切で、中にはロクに動かない人もいるので注意が必要です。

身近にいない場合は、当社から交渉ごとに慣れた専門家をご紹介できます。

どちらで進めるにしても、まず貴殿がやらなければならないのは「未払いが

あったことを証明する証拠集め」です。具体的には

「本来もらえるはずの給与金額が分かる証拠」

⇒雇用契約書、労働条件通知書、過去の給与明細、給与口座の取引明細(通帳)、

源泉徴収票など

「実際に勤務していて、未払いがあったことが分かる証拠」

⇒タイムカード、業務日報、メールやLINEの送信記録、シフト表、手書きの

勤務時間・業務内容記録など

これらをできるだけ数多く確保しておいてください。

未払分の請求金額が確定したら、お店宛に内容証明郵便を送ります。文面サン

プルはネット上にいろいろあるのでご参照頂きたいですが、このような感じ

です。

私は○○年○○月○○日貴店に入店し(、○○年○○月○○日に退職し)た

者です

私は○○年○○月○○日から○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします)

まで貴店において、労働に従事致しましたが、貴店からは一切給料をお支払

頂いておりません。

よって私は貴店に対し、請求期間内の未払賃金の合計額である★円の支払を

請求致しますので、本書面到達後1週間以内に、以下の口座に振込む方法に

よるお支払をお願い致します。

○○銀行○○支店 

普通/当座 

口座番号○○ 

口座名義人○○

なお、本書面到達後を1週間を過ぎても貴店から何らご連絡頂けない場合は、

労働基準監督署への申告、および法的手段をとることをあらかじめ申し添え

ます。

法的手段には「支払督促」、「少額訴訟」、「民事調停」、「労働審判」、「通常訴訟」

など様々ありますが、ご自身で進める場合は少額訴訟か労働審判がよいでしょう。

弁護士に依頼すれば、まずは弁護士間で交渉がおこなわれ、その時点で妥結

することも多いです。

Q. 小さい建設会社に務める主人のことでご相談です。会社から、コロナ禍の影響

で売上が上がらなかったため、ボーナスが出ないと言われてしまいました。

休業などもしていないため手当も貰ってるわけではなく、一生懸命毎日仕事して

いる姿を見てきましたので、私も辛いです。業界にありがちなブラックさで、

タイムカードなどはなく、みなし残業代も明確ではありません。中小企業は

コロナ禍のために給付金を貰っているのだと思うのですが、違うのでしょうか?

ボーナスは社長さんの懐に入ってるのではと疑ってしまいます。正直主人が不憫

で辞めて欲しいのですが、本人が首を縦に降らず困っております。こういった

場合、どのような機関に申し入れれば良いのでしょうか?

A.        それはさぞご心労のこととお察し致します。このご時世、大手企業でさえも

ボーナスカットに至っておりますので、中小規模の会社であれば尚更大変な

ことでしょう。

最初に残念なお知らせから申し上げると、「会社がボーナスを支払わなければ

ならない」と決めた法律は存在せず、支払は義務ではないのです。ボーナスや

賞与の支払いは会社側の判断に任されており、支払わなくても違法ではありま

せん。

しかし、会社側が支払義務を負うケースもあります。それは、「労働契約書」や

「就業規則」などで、ボーナスや賞与を支払うことが支給基準とともに明記され

ている場合です。その際は労働の対価として賃金に該当するため、会社には支払

義務が発生し、社員は未払いボーナスを請求できる権利があります。ぜひ、会社

の就業規則や、ご主人の入社時の契約書の文面を確認してみてください。

また、ご主人がお勤めの会社に労働組合がある場合は、会社との合意事項を定め

た「労働協約」を確認してください。ボーナスや賞与に関する取り決めが記され

ていることがあります。

ただし、就業規則や賃金規程などでボーナスについて規定されていても、「会社

の業績によってはボーナスの額を縮小するか、支給しない」といった旨が明記

されていることがあり、その場合は支給されないケースもあります。まさに今般

のように、コロナ禍で業績が悪化している場合はこの条項に該当することに

なるでしょう。

しかし、今回伺った情報でボーナスよりも大きな問題があります。それは「タイ

ムカードがない」「みなし残業代も明確ではない」といった点です。おそらく

ご主人がお勤めの会社では、勤怠管理をまともにおこなっておらず、本来支払わ

れるべき残業代や各種手当(休日出勤の割増分や、深夜残業代など)が正当に

支払われていないのではないでしょうか。

ボーナスは規定次第で請求が難しくとも、実際に働かれた分の残業代を請求

することは労働者の正当な権利ですので、社長と交渉されることをお勧め

します。その際はタイムカードがない以上、ご主人がご自身の手帳等に日々の

出勤・退勤時刻と休憩時間を記録しておいたメモを証拠として提出し、「本来

であればこれだけの残業代が得られるはず」とお話してください。

ちなみにその際は、ご主人にICレコーダーを持っておいてもらったり、携帯

電話のボイスメモ機能をONにしておいて頂き、社長がどのように対応するか

記録されることを強くお勧めします。もし「そんなメモなど信用しない」と残業

代支払いを拒絶したら、メモと録音記録などの証拠を基に、最寄りの「労働基準

監督署」に申告しましょう。

申告の際には、「残業をした証拠」と「残業代が支払われていない証拠」がそれ

ぞれ必要になります。前述の「出勤・退勤時刻メモ」に加え、「給与明細書」と

「就業規則」、「労働契約書」などのコピーをお持ちになってください。そして

上司や社長の発言も有力な証拠になります。その際は「発言者の氏名、役職、

日時、場所、発言内容」をメモしたものと合わせて提出してください。

もし申告によって会社の残業代不払いが認められた場合、労基署からは会社に

対して是正勧告や指導がなされることになります。まともな会社であればそれ

できちんと支払うはずですが、支払う気がない会社であれば真のブラック企業

ですので、法的対処も含めた対応が必要になります。その際はまたご相談ください。

Q. うちの会社は勤務時間が15分単位になっており、14分以下の残業は切り捨て

られ、遅刻等でカード打刻時間が「◯時1分」の場合、「◯時15分出勤」扱いに

されてしまいます。

そのため先月の給料から、遅刻早退控除として、手取りから3000円近く差し

引かれてしまいました。会社までは車で片道1時間半程かかり、道路状況に

よっては20分程時間に差があるにもかかわらずです…。これって法律的には

どうなのでしょうか。もし違法性があるとすれば、どこに通報すれば良いで

しょうか?

A.        実に悪質な会社ですね。しかし、世の中には同様に運用している会社も多い

ことかと思われますし、経営者や人事担当者さえも何が問題なのか知らない

ケースもあろうかと思いますので、この機会に詳しく解説しておきましょう。

そもそも法律上、「労働時間は1分単位で管理し、計算する」ことが大原則です。

したがって勤務時間でも残業時間でも、15分単位や30分単位などで管理し、

端数を切り捨てて処理してしまうこと(端数処理)は、本来支払われるべき賃金

が支払われていないということになるため、原則として違法なのです。

ここで「原則として」とつけているのは、一部例外があるためです。厚生労働省

の通達で、「1ヶ月の時間外労働(残業、休日出勤、深夜労働分)を集計した

合計時間数に端数が出た場合に、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に

切り上げる処理をすること」は可能、とされています。

逆に言えば、端数処理が許されるのはあくまで「1ヵ月単位の集計で発生した

端数」程度であって、御社のように1日単位で、かつ法定労働時間の端数を

切り捨てることは違法だと判断されます。

また遅刻した分の給与減額についても二重に違法性が疑われます。それは「実際

に働いた分まで減額している」ことと、「制裁規定にない減給がおこなわれて

いる可能性がある」ことです。

前者については、仮に1分遅刻したとして、その1分ぶんの賃金をカットする

ことについては、「ノーワーク・ノーペイの原則」があるので問題はありません。

しかし今回のケースのように、1分の遅刻でも15分単位で減給されてしまうの

であれば、ちゃんと仕事している残り14分ぶんの賃金が支払われていないこと

になります。これは労働基準法第24条「賃金の全額払いの原則」違反です。

後者についてはぜひ御社の規程を確認頂きたいのですが、遅刻に対して実質的

に罰金のような控除をおこなう場合、「就業規則」や「賃金規程」の中に「遅刻

に対しては15分単位で制裁としての減給をおこなう」と明記していないと違法

になります。

そのような規程があれば違法にはなりませんが、制裁としての減給であれば、

その金額は法律で「1件につき平均賃金の半日分まで」と上限が決まって

います。仮に月給が30万円であれば、平均賃金は約1万円なので、減給上限は

5000円となります。もし御社における控除額が「15分あたり3000円」といった

規程になっていて、仮に30分遅刻した場合は6000円の減給となってしまう

のであれば、そちらについても違法性が高くなります。

まずは会社側に違法性について見解を求めたうえで、誠意ある対応がなされ

ないのであれば、証拠をきちんと揃えた上でお近くの労働基準監督署へ申告

することをお勧めします。証拠とは具体的には「タイムカード」「雇用契約書」「就業規則」「給与明細」「実際の労働時間を記録したメモ」など、実際に働いた

時間と支払われた給与の差が分かるようなものです。

もし申告によって会社の意図的な賃金不払いが認められた場合、労基署からは

会社に対して是正勧告や指導がなされることになります。まともな会社であれ

ばその段階できちんと支払うはずですが、支払う気がない会社であれば真の

ブラック企業ですので、法的対処も含めた対応が必要になります。その際はまた

ご相談ください。

Q. レジの違算金等をバイト、パート、正社員関わらず従業員に負担するように

会社が言ってきます。ネットで検索すると、法律的には支払う必要がないと説明

されますが、実際は「自腹で補填するのが当たり前だ!」と教えられて信じ込んで

いたり、全額自腹負担がイヤでもなかなかお店側と交渉しにくかったり、結局泣き

寝入りしている人も多いと思います。何かいい解決方法はないでしょうか。

A.        レジ計算を間違えた場合の違算金を自腹で補填するルールを設けているお店は

多いようですが、従業員側にとっては別に故意に間違えたわけではないのに、

ヘタしたらその日がタダ働きになりかねない金額を自腹補填するのは納得いか

ないというのは当然でしょう。

法的にはご指摘のとおり、従業員側の責任割合が100%になる(違算金を全額

補填する)ことはほとんどありません。考えられる原因は、レジの打ち間違いや

金銭の受渡しミスなどであることから、「ミスをした従業員に責任があるのは

当然」「店が損した金額を賠償(=自腹補填)しろ」となるのでしょう。しかし

過去の判例では、「従業員が業務上おかしたミスで発生した損害を、従業員だけ

に押し付けるのは不公平」「損害は使用者と従業員との間で公平に分担すべき」

というのが基本的な考え方になっています。したがって、お店側の損害賠償請求

はかなり制限されているのです。

仮にお店が従業員に損害賠償を請求することになったとしても、そのような

ミスが発生しないよう、お店側でも「自動計算レジや券売機の導入」「多額の

現金をやり取りする際は、複数のスタッフでチェックする仕組みづくり」など、

どの程度違算金発生を防ぐ手立てをしていたのかを問われますので、お店側に

も責任があるわけです。

なので、違算金が発生し、仮に「明らかに従業員のミスである」と判明したと

しても、従業員が注意を怠った程度(よくミスするのか、今回たまたまだった

のか)、従業員としての地位や労働条件、違算金が出ないようにする体制の有無

などを多角的に考慮され、違算金全額を負担させられるようなことはないもの

と考えられます。また、コンビニなど全国チェーンでは規定があり、違算金を

従業員に負担させないように決められているケースが多いです。

違算金負担においてより違法性が高くて問題なのは、「補填分を給料から天引き

すること」や「懲戒処分で減給すること」です。そもそも給料は全額払いが原則

(労働基準法第24条第1項)であり、社会保険料や所得税の源泉徴収、労使の

書面協定といった事情がない限り、「天引き」はできません。それが仮に労働者

の不法行為を原因としたものであっても、天引きはできないという最高裁の

判例もあるくらいです。また懲戒処分としての減給をおこなうには、就業規則に

懲戒の規程を定めておく必要があり、また懲戒を下すにしても相当な理由が

必要です。そうでなければ「懲戒権の濫用」として、その懲戒は無効になるのです。

レジで違算金を出したことで懲戒というようなお店は、懲戒の相当性を欠き、

適正な手続きを踏んでいない等の理由で、減給は認められない可能性が高い

でしょう。

もしそのような違法性が高い処分をされそうになった際はキッパリ断るべき

ですが、難しい場合は労働基準監督署か、お店がチェーン店であれば本部に

対して申告しましょう。

Q. 滋賀県の温泉旅館調理場の従業員が、仕事上のミス1回あたり500円の罰金を

  支払わされていたとして、料理長と旅館運営会社に対して損害賠償を求めた

  裁判に関するニュースがありました。私の勤務するお店でも、遅刻やルール

違反に対して罰金がありますが、これは違法なのでしょうか。

A.           訴状によると、問題の旅館では料理長が従業員に対して暴力や暴言が繰り返し

なされていたほか、仕事上のミスがあると罰金として1回当たり500円、多い

月で1人1万円余りを支払わされた、とのことです。

実際、ご質問者様のように罰金制度がある会社やお店は多いことと思いますが、

そもそも論で申し上げると、会社やお店が従業員に罰金を科すことは「原則として

違法」なのです。ただし、一定の条件を満たせば合法になるケースもあります。

(私自身は20年以上ブラック企業とやり合ってきていますが、完全に合法な

 罰金制度を設け、的確に運用できているところは現時点で出会ったことが

 ありません…)

具体的には、次の条件を全て満たすことができれば合法になります。

1、罰金制度が就業規則に定められていること

就業規則に規定のない罰金制度は違法です。もちろん、就業規則そのものが

存在しない会社もありますが論外ですね。

2、損害賠償のためではなく、あくまで「制裁」目的の罰金であること

本来、罰金の目的は「企業の秩序維持のため」でないといけません。遅刻や

欠勤などのルール違反行為に対して「次から同じ失敗をしないように」と

「制裁」し、秩序を回復・維持するためにおこなうのが本来の意図です。

一方でよく見かけるのは、商品や備品を壊したりした際に「損害賠償金」的

な位置づけで罰金を課するパターンです。しかしこれは労働基準法第16条で

規定されている「損害賠償額の予定」に該当し、違法になるのです。

3、罰金額が法律で定められた上限を超えていないこと

労働基準法では、1回あたりの罰金の上限額が決められています。具体的には、

「1回あたりの罰金額は、1日の賃金の半額を超えないこと」、かつ「1カ月

あたりの罰金額のトータルは、月の賃金の1割を超えないこと」となっています。

たとえば、「日給1万円で月20日働く」人であれば、1日の罰金額上限は5000円

まで、1カ月の罰金額上限は2万円までということになります。いくら問題

行為を繰り返していたとしても、それ以上の金額の罰金を課すことは違法です。

4、制裁行為と罰金額のバランスが、社会通念上相当であること

制裁したい行為に対して、あまりにも罰金額が高すぎる場合は違法性が高く

なります。たまに飲食店などで「遅刻:罰金10,000円」といったルールを目に

することがありますが、行為に対して罰金が重すぎるうえ、法律で定められた

上限金額を超えている可能性も高そうですから、違法性が高いといえます。

5、罰金が給与からの天引きや、現金徴収になっていないこと

労働基準法24条で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければ

ならない」と定めがありますので、給与から罰金を控除(天引き)することは

違法です。またこれもよく見かけるパターンですが、オフィスに貯金箱を設け、

「遅刻したら各自100円入れること」といったルールで従業員から現金で徴収

するような罰金も違法となります。

ここまで読まれた方からは、

「天引きも現金徴収もできない!? じゃあどうしたら罰金をとれるのか!?」

といった疑問を持たれるかと思いますが、きちんと手順を踏めば罰金制度は

実現可能です。とはいえ、多くの方がイメージされる「罰金」とは少々異なり、

実質的には「懲戒処分としての減給制裁」という形になります。

懲戒処分には、軽いものから準に「訓戒」、「戒告」、「譴責」といったものが

あり、これらはいずれもルール違反行為に対して口頭注意~文書注意がなされ、

違反者が始末書を提出するレベルの処分です。

しかし、それでも違反者が反省せず、さらに同様の行為が繰り返されると次の

段階、「減給処分」がなされるのです。これは問題行動に対する制裁として、

従業員の給与を減額する懲戒処分であり、先述の上限範囲内で給与減額がなさ

れるわけです。

  簡単に「罰金」といっても、本来はこれだけの法的な縛りの中で実施しなければ

  ならないものですので、完璧に合法的に実施できるケースは稀というのも

お分かり頂けたでしょう。逆に、世の中いかに違法な罰金がまかり通って

いるかということでもあります。もしお勤めの会社やお店で罰金制度がある

場合は、上記5点についてきちんと守られているか、確認してみられることを

お勧めします。

Q. 当社ではコロナの影響もあり、早期退職者を募集するらしいという噂が飛び

交っています。私としては業界自体の先行きが不透明なこともあり、割増退職金

等の条件が良ければ応募したいと考えているのですが、どうやら年齢的に微妙に

条件にひっかからなそうなのです。早期退職については分からないことだらけ

なので、以下の疑問についてご教授頂ければ嬉しいです。

(1)     応募条件に当てはまらなくても、応募することはできるのでしょうか?

(2)     割増退職金の加算は「最大●カ月分」などと言われます。仮に会社側の

公表が「最大30カ月分」だとして、私に対して提示された条件が

「15カ月分」なら、交渉によって引き上げることは可能なのでしょうか?

(3)     割増退職金の支払いは、分割でも可能なのでしょうか。また、振込先の

銀行口座をいくつかに分けてもらうことも可能でしょうか?

(4)     会社は割増退職金を出すとはいっているものの、具体的な条件の提示が

ない場合は、どうしたらいいのでしょうか?

A. 頂いたご質問について、それぞれ回答していきましょう。

(1)     応募条件に当てはまらなくても、応募することはできるのでしょうか?

⇒条件に当てはまらないものの、早期退職に応募したい場合は、上司や人事に

掛け合って了承が得られれば応募可能になることもあります。ただし、各社の

判断次第であるため、必ず了承が得られるとは確約できません。まずは問合わせ

てみてください。

(2)割増退職金の加算は「最大●カ月分」などと言われます。仮に会社側の

公表が「最大30カ月分」だとして、私に対して提示された条件が

「15カ月分」なら、交渉によって引き上げることは可能なのでしょうか?

⇒早期退職に伴う優遇条件(割増退職金、もしくは特別手当等)はあくまで企業側

が独自に決めるものであり、そもそも「優遇条件を付与するか否か」という段階

から企業側の判断によります。全員が等しく得られるわけでも、労働者が求めれば

増額されるという類のものではない、というのが大前提なのです。まずは、「割増

退職金が存在するだけでも恵まれているほう」だという認識からスタートすべき

でしょう。

一般的に、割増が何ヵ月分になるかは「在籍年数」によって変わります。中小企業

の場合、平均すると勤続10年で5~6ヵ月、15年で10ヵ月、20年で12ヵ月、30

年で20ヵ月程度というところです。しかしこの数字もあくまで平均値であり、

もしお辞めになる前提であれば、会社が「割増金を払う」と表明しているタイミング

ですぐに応募すべきです。往々にして、初回に提示する割増率がもっとも割が良く、

2回目以降に応募する場合は段階的に割増率が低下していくことが主だからです。

また日系企業の場合、交渉せずに会社の提示を大人しく受けるケースがほとんど

ですが、外資系企業(の外国人社員)はその辺慣れているのか、ダメもとでも交渉

する者が多い印象です。交渉といっても金額そのものを増額することは困難である

ことが多いので、例えば「あと●ヵ月勤務すれば勤続丸15年目に入り、割増分が

加算される。◇月になったらすぐ自主退職するから、●ヵ月だけ在籍させてくれ」

とか、「転職活動時に在籍中のほうが有利なので、オフィスは◇月で去って備品も

返却するが、籍だけは◆月まで勤務したことにさせてくれ」などといった形が主

になります。

(3)割増退職金の支払いは、分割でも可能なのでしょうか。また、振込先の

銀行口座をいくつかに分けてもらうことも可能でしょうか?

⇒その会社の「就業規則」や「退職金規程」次第です。当該規定に「退職金は分割

して支給する」旨の定めがあれば、分割支給や口座を分けた形での支給を依頼する

ことが可能になりますが、規定がなければ基本的に対応することは不可能です。

特にそうしなければならない理由があれば、個別に会社に依頼するしかありません。

なお、退職金の分割支給が定められている場合、単に「分割して払う」というのみ

ならず、「退職の日から1カ月以内にその半額を、6カ月後に残りの半額を支給」

などといった形で「分割回数」と「それぞれの支払時期」等についても定めがなさ

れているものなので、従業員側の希望に合わせて分割がなされることは基本的に

困難と考えられます。

(4)会社は割増退職金を出すとはいっているものの、具体的な条件の提示が

ない場合は、どうしたらいいのでしょうか?

⇒具体的な条件を文書で明示するよう会社側に要求すべきです。それでも明示され

ない場合は、会社としては従業員に早期退職してほしいわけですから、「具体的な

条件が明示されない限り、退職届は出せない」と交渉すればよいでしょう。

Q. 50代、60代のリストラについて教えてください。法律によって、定年に

なっても、企業は希望があった人については65歳まで雇わないといけないはず

です。しかしコロナの影響で、私の周りでも再雇用の更新をされなかった人が

多くいるのです。

60歳を超えて雇い止めにならないような対策はあるのでしょうか。それとも、

もう65歳くらいになったら雇い止めを受け入れるしかないのでしょうか。

 私にはとくに専門性といえるものもないので不安です。

A.           コロナ禍でリストラが蔓延しているので不安になりますよね。たしかに、

「高齢者雇用安定法」があるため、60歳で定年になっても、企業は希望した

人を最低65歳まで雇わなければいけないという決まりになっています。

したがってそもそもの大前提として、60歳定年制を採用する企業にとって

 希望者に対する65歳までの再雇用は法律上の義務ですので、再雇用拒否は原則

として違法になります。実際、再雇用拒否にまつわる裁判でもほとんど企業側が

敗訴しているのです。

ということは、企業側による「再雇用の更新ナシ」という言い分を受け容れて

しまっている人は、この法律や判例を知らず、会社の言うがままに従っている

だけで、会社側と何の交渉もしていないのではないかと考えられます。

逆に、再雇用拒否が認められるケースとしては、「対象者に解雇事由に相当する

ような問題があった場合」と「再雇用に際して企業側から提示した労働条件で

合意に至らなかった場合」がありえます。

前者はたとえば、「病気やケガ、体力不足などで就業不能」な場合や、「能力不足

や成績、業務態度不良」「転勤拒否など業務命令違反」「セクハラやパワハラ加害」

「経歴詐称」「犯罪行為」といった、懲戒対象となるような行為をおこなったり、

指導を受けても改善しなかったりした経歴があるケースが該当します。

後者はたとえば、「定年前とは別部署での再雇用を拒否」とか、「フルタイム勤務

だったところから週3勤務になるのを拒否」といった、ある程度合理性がある

会社側からの提示を従業員側が拒否したケースですね。

法律では「再雇用」自体は義務ですが、「定年前と同じ労働条件にすること」は

義務ではありません。通常は業務内容や給与、勤務日数などの条件は、再雇用

希望者との個別交渉で調整するものとされています。

しかし、昨年10月に名古屋地裁で出た判決によって、企業側のスタンスは

大きく変わりそうです。具体的には、定年後再雇用者の基本給減額の是非が

争われた訴訟の判決で、名古屋地裁は「同じ仕事なのに基本給が定年前の6割を

下回るのは不合理な待遇格差に当たる」と認め、名古屋市の自動車学校に対して

未払い賃金分の支払いを命じたものです。

再雇用の基本給、6割下回るのは「不合理」 名古屋地裁

とくに大企業の場合、定年まで在籍した人は往々にして「その企業内でしか

活かせないスキル」しか保持しておらず、独立や転職することもできないため

再雇用に頼るしかありません。企業側も決して好んで再雇用しているわけでは

なく、そういった「行先のない社員に対する温情」的な部分も少なからず存在

するものと考えられます。

そんな状況の中でこの判決は、そういった温情的な対応まで全て吹っ飛ぶような

事態になりかねません。年功序列で高くなった給与を、再雇用時点で6割以下に

してはいけないと言われるなら、「何としてでも理由をつけて再雇用を拒否する」

か、「ベアは完全になくして自動的な昇給をストップさせる」という動きが加速

するはずです。

ワリを食うのは今の50代はもちろん、一番シワ寄せが来るのが若者でしょう。

これまでは「上が詰まっているから昇給が遅い」という問題だったのが、これ

からは「そもそも昇給自体しない」となるリスクがあるわけです。もう現状の

システムで若者のモチベーションを上げること自体が無理になるのではないで

しょうか。年功序列的な大企業のステータスが下がり、年齢に関係なく働きに

応じた報酬が得られるスタートアップの地位が向上することになるかもしれ

ません。

そう考えると、50代も60代も、もう会社には頼っていられないでしょう。

在籍中から副業をおこなったり、個人年金や投資などの資産防衛と資産形成、

 いざというときは公的支援に頼るなど、あらゆる手を使って生き残る覚悟が

必要になるといえます。

Q. 転職面接を受け、口頭で内定を頂きました。内定通知書は頂いたのですが、

  労働条件については「求人票に記載しているので」という理由で口頭説明を

受けただけで、雇用契約書的な書面は渡されませんでした。そんなものなの

かなとも思いましたが、後から「言った・言わない」で揉めるものイヤなので、

きちんと書面でもらっておいたほうがいいでしょうか。

A.           雇用契約書(労働条件通知書)を発行せず、あえて口頭説明だけで済ませようと

しているのですね。その場合は仰る通り、説明を受けた項目をぜひ書面で出して

もらうように依頼してください。もし書面化を渋るようであれば、その会社は元々の募集要項とは異なる、あなたにとって不利な条件で働かせようとする、

悪意ある違法企業である可能性が高いかもしれません。

通常であれば企業側は、「雇用契約書」か「労働条件通知書」、もしくはその両方の

書面を発行し、内定者に交付するものです。そこには「給与」「労働時間」「残業」

「休日」などの労働条件について記載されており、どういった労働条件で働くのか、

あなたと企業がお互いに確認するために必要な書類なのです。

労働条件を明示する書面を交付しないということは、会社としてはあなたに本来の

労働条件を知られたくない理由があると考えられますし、のちのち

「給料額が求人票と違った!」

「長時間残業を強制された!」

「週休2日のはずなのに毎週土曜出勤!」

「突然『明日から来なくていい』と言われた!」

といったトラブルが発生しても、「書面がないから、本来の労働条件が証明でき

ない…」といった泣き寝入りを強いられてしまうリスクもあります。入社前までに

書面が交付されていない場合は、すぐに会社に労働条件の明示を求め、書面を発行

してもらってください。

細かいお話になりますが、このうち「雇用契約書」はもらえていなくても法的には

問題ありません。ただ「労働条件通知書」を交付しないのは違法なのです。

 労働基準法第15条 労働条件明示義務

 労働条件通知書は、会社は従業員に対して必ず交付しなければならない。

しかも、書面の中で必ず記載して通知しなければならない項目も次のとおり決まっています。

<書面の交付による明示事項>

①労働契約の期間

②就業の場所・従事する業務の内容

③始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、

交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

④賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項

⑤退職に関する事項(解雇事由を含む)

なお、

・労働条件が書面で明示されていなかった

・通知された労働条件の内容が、労働基準法で定められたルールを満たしていない

などの場合は、労働基準法違反として罰則の対象にもなります。もしあなたが働き

始めてから、実際の労働環境が「労働条件通知書の内容と違った」という場合、

あなたは即座に雇用契約を打ち切ることができますので覚えておいてください。

なおご参考までに、労働条件通知にあたって、以下の項目については口頭説明でも

よいものとされています。

<口頭の明示でもよい事項>

①昇給に関する事項

②退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計

算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

③臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項

④労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項

⑤安全衛生に関する事項

⑥職業訓練に関する事項

⑦災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

⑧表彰、制裁に関する事項

⑨休職に関する事項

この記事を書いた人

新田 龍

働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト。
「ブラック企業就職偏差値ランキング」ワースト企業出身。働き方改革推進による労働環境およびレピュテーション改善支援と、悪意ある取引先相手のこじれたトラブル解決が専門。各種メディアで労働問題・ブラック企業問題を語り、優良企業は顕彰。トラブル解決&レピュテーション改善実績多数。著書21冊。

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