対人コミュニケーションのノウハウ

・あいさつの「先手」をとろう

●みんな意外とできていない

プライベートでもオフィシャルな場面でも、初対面では必ず「先手をとる」ことを心がけましょう。すなわち、第一声はなんとしてでもこちらからかけるようにするのです。これを意識的にやられている方はかなり少ないと思います。ゆえに、できる人とできない人で大きな差がついていきます。

あいさつは、相手を認める行為

あいさつの本質を知るには、「挨拶」という漢字の語源について知るのがいちばんです。「挨」という文字には、「押し開く」、「互いに心を開いて近づく」という意味があり、「拶」には、「迫る」、「すり寄る」といった意味があります。つまり、お互いに心を開いて相手に迫っていくことが「挨拶」なのです。この意識で人と向き合えば、好意は自分にも返ってきます。

逆にいえば、相手からあいさつされるのを待つだけで、声を掛けられない限り自分からあいさつしない、という人は、「相手に心を開いていない」ということであり、相手を無視しているのと同じことなんです。

「伝わらないあいさつ」をしていませんか?

あいさつは、相手に伝わってはじめて成立するものですが、せっかく好印象が与えられるコミュニケーションの機会なのに、きちんと生かせていない人によく会います。 こんなご経験はないでしょうか。

あなた 「おはようございます!」

相手 「…おはようございます…」

(なんか元気ないなあ、この人…)

あなた 「こんにちは。はじめまして!」

相手 「…」(軽い会釈だけ)

(あれ!? なんだろう…、私嫌われてるのかな…)

このような、「こちらからあいさつをしたのに、無視同然だった」「きちんと返してもらえなかった」反応、意図的にしているわけではないはずです。でも反応が芳しくなければ、やがて周囲はその人にあいさつしなくなります。それはすなわち、「その人に心を開かなくなる」ことと同じなんですよね。

あいさつは先手必勝でリードする

●意外と「あいさつなんて…」と考えている人が多い

「コミュニケーションのノウハウなのに、今さらあいさつの話をされても…」と思う人もいらっしゃるかもしれませんね。 

逆に言えば、そのように軽く考えている人が多いからこそ、「あいさつさえできない」人が増えるのです。それだけに、徹底すれば人間関係でのアドバンテージがとれることは間違いありません。実際、人脈に恵まれ、いつも人の中心にいるタイプの人たちは、このあいさつを実に戦略的に活用しているものです。

ちなみに、あいさつとは「おはようございます」とか「こんにちは」といったような定型的なものだけを指すのではありません。いうなれば、「人間関係を強化するために有効なひと言はすべてあいさつ」ということですね。たとえば、会った相手がなにかしら楽しそうであれば、

「何かいいことあったんですか?」

とひと声かけるのもあいさつ。 2回目に会った人が、前回とは違って浮かない印象であれば、

「今日はどうしたんですか…」とか「何かお困りのことでもおありですか」

などと配慮するのもあいさつなんです。そのように最初に「相手に関心がある」「相手のことを気にかけている」という気持ちが伝われば、お互いの親近感や信頼は自然と構築されるものですよね。

先手必勝のあいさつで、リードできる

先手の声掛けは、相手をリードし、人の心を掴む力を持っています。私が新入社員当時、剛腕で鳴らしていた営業部長から最初に受けた指導が

「まずこちらから第一声を発しろ。最初のあいさつ、そして名刺交換して席に座るとき、尻が椅子に触れるかどうかというタイミングで何か言え」

というものでした。愚直に実践していましたが、相手が目上であろうが年上であろうが、不思議と落ち着いて話せた実感があります。心理的なものにせよ、自分の存在を相手に印象づけることができ、ひいては自分の土俵で勝負している感覚があったからなんでしょうね。 

実際、何かしらの分野でトップと呼ばれる地位におられた人には、業界や職種関係なく、普段からの行動で自然に発揮できるくらい身に着いている、5つの要点がありました。それは、「笑顔」「目線」「あいさつ」「お辞儀」「返事」です。いずれも「幼稚園でも習うくらい基本的なこと」かもしれませんが、一方で「それくらい早いうちから教わっておかないと身につかないこと」でもあるといえるでしょう。「頭では分かっていること」と、「普段からもれなく実践できていること」は違うんです。あなたは「幼稚園でも習うようなことさえできていない人」になっていませんか?

初対面で相手に心を開いてもらうポイント(1) 「自分から相手に好意を持つ」

●コミュニケーションを劇的に変える「ザイアンスの法則」

対人コミュニケーションにおいて有名な、「ザイアンスの法則」というものがあります。2章でご紹介したあいさつでしっかり印象づけられなかった場合でも、この法則を意識して行動すれば、人間関係を創りなおすことが可能です。初対面の場面で役立ちそうな要素を具体的に説明していきましょう。

1…人間は知らない人には攻撃的、冷淡な対応をする (好意の返報性)

2…人間は相手の人間的な側面を知ったとき、より強く相手に好意を持つようになる

3…人間は会えば会うほど好意を持つようになる

ザイアンスの法則その1は、「自分から相手に好意を持つ」ことです。2章で述べた「あいさつ」の重要性も、ポイントは「お互いに心を開いて相手に迫っていく」ことでした。この意識で相手に好意をもって向き合えば、その好意は自分にも返ってきます。好きにさせるには、まず自分から好きになるということですね。よく考えてみれば、私たちは自分に好意を持っている人の話ならどんな話題でも聴きたいと思うはずです。そして、同じアドバイスを受けるにしても、好意を持ってくれている人から受けたほうがやる気になるなんていうこともあるのではないでしょうか。 

とはいえ、思わず一目ぼれしてしまうくらいの魅力的な人が相手ならまだしも、普段初対面で会う人全員が「積極的に好意を持てる人」とは限りませんよね。

そんなときは、「自分が好意を持った人に対して、どんな行動を自然にとっているか」思い返してみるのが有効です。 たぶん、相手に興味があればあるほど、「もっとこの人のことが知りたい!」と強く思うのではないでしょうか。

「この人って、どんな人なんだろう…?」

「どんな価値観や趣味、嗜好の人なんだろう…?」

「どんなハナシなら面白いと思われるかな…?」

「今、どんな気持ちで聴いてくれてるんだろう…?」

「私の言ってること、分かってくれてるかな… 伝わってるかな…?」

よく考えたら、これらの思いや配慮はすべて「相手を積極的に理解しよう」とする姿勢であり、日常的なコミュニケーションにおいてもぜひ持っておきたいスタンスと同じなんですね。 恋愛の場面なら無意識のうちに想いをめぐらすことばかりですが、ぜひ日常においても意識してやってみることをお勧めします。 

相手に好意を持ってほしいなら、まずは自分が相手に好意を示すこと。 相手に理解してほしいなら、まずは相手を理解することです。 こういった積極的な姿勢が相手に伝われば、想いはかならず返ってくるものなのです。  

初対面から相手に心を開いてもらうポイント(2) 「自己開示する」

初対面の相手に心を開くポイントがいろいろある中で、最初の数分間で有効な手段といえば「自己開示」ですね。すなわち、会話の中で段階的に自分のことを明らかにしていき「自分ってこんな人なんです」と知ってもらうことです。プライベートな話も交えながら、共通点や共感できるポイントを探していきましょう。私ならたとえば、

「関西生まれ、東京育ちです」

「ブラック企業問題の専門家です」

「辰年生まれで、動物占いはペガサス。どちらも空想上の動物ということもあり、私自身も捉えどころのない人間とよく言われます(笑)」

などと言ったりします。 また、あえて弱い部分を開示するのもいいでしょう。

「今日のグループワーク、緊張しましたよね。私、まだ就活を始めたばかりで…」

「いや~ この場に知り合いがいないもので、一人だと気後れしますね…」

そうすると、そもそも自己開示する時点で相手は「ああ、この人は自分の個人的なことを話すなんて、私に心を開いてくれてるんだな」「信頼してくれてるからなんだ」などと思ってくれます。また話をする中で意外な共通点が見つかったりして、そこからさらに話題が広がり、結果的に親近感が高まる、といったこともありますね。

そしてこの方法は、相手が苦手なタイプであるほど有効なのです。 

人のことを苦手と思ってしまう根本的な原因は、「その人のことをよく知らない」ことに起因することが多いんです。動物は、よく分からないものに恐怖感を抱くようにできてますので。(先が見えなくて、状況がよく分からない暗闇とか、怖いですよね。それと同様です)逆に、その人のことがよく分かれば、意外と憎めない部分があったりして、親近感を抱くようになることはよくあるものなのです。「あれ、この人いつも怖い顔してると思ったけど、笑ったらかわいい感じだな…」というふうに、相手を知れば知るほど苦手ではなくなることは多いです。私自身も多く経験していることですので、試してみてください。 

ただ、相手との感覚にギャップがあり過ぎると拒否感を抱いてしまうものですので、いきなりすべてを開示すればいいというわけではありません。自己開示にあたって適切なテーマとそうでない話題を、私なりの感覚で一覧表にしてみましたのでご参照ください。 「レベル」の数値が大きくなるほど、初対面で話題にするには避けた方がいいテーマになります。 

最初は相手の反応も確認しながら、「レベル2」までの話題を楽しみましょう。

相手の心を開かせるには、まず自分が心を開いて打ち解けていくのがいちばん。 また共通点が見つかるのも、距離が縮まる要素になります。自己開示のキャッチボールにより、お互いの親密度は増していくものです。

【レベル1】

年齢・世代、星座、血液型、出身地、持ち物、趣味・趣向、業界・業種・職種、学校やオフィス関連、最近の笑える軽い失敗、自覚している容姿やセンス・キャラクター

【レベル2】

現住所、子供・育児、ヘンなクセや習慣、仕事上でのミス(年に数回程度の重さ)、転職、受験や就職の成功、恋愛ネタ(恋人ができた、ノロケ、フラれた…など)、婚活

【レベル3】

給与や金、致命的なミス(一生に1回程度の重さ)、仕事のグチ、受験や就職の失敗

【レベル4】

犯罪、裏切り、離婚、経済破綻、社内人事、内部秘プロジェクト、悪口、人の死にまつわる話題、ディープな男女関係

初対面から相手に心を開いてもらうポイント(3) 「次のステップを用意する」

初対面で話していく中で「この人とは関係を繋いでいきたいな」と感じたら、次も会うように行動しましょう。 繰り返し会うこと、それも回数が多いほど、相手との親近感が増していきます。 

とはいえ、お互いによく知らない相手から突然 「好きです」とか「もっと関係を深めていきたいです!」 などと言われても、普通は引いてしまうだけですからね。 まずは「会う」こと、そして「話をたくさんする」ことが大事です。 そうやって段階的に心を通じ合わせていくのです。 これは恋愛テクニックにおいては有名な方法ですが、もちろん人間心理に根差した考え方なので、同性同士でも通用します。

たとえば「何か約束をする」というのは、次回会うチャンスを作る上で有効な手段なんですが、それを有効に活かせていないパターンを多く見かけます。

×「では、またそのうち…」

「いつか、飲みでもご一緒しましょう…」

このような「あいまいな約束」は古今東西実行されたためしがないので、私は「『また』と『いつか』は一生来ない!」と常々言っています。 

きっかけはなんでも構いません。その場で何かしらの「宿題」をつくって、次回会う予定を調整することで、「あなたとはまた会ったりして、関係を繋いでいきたいんですよ」という気持ちを示しましょう。

○「今日お話にあった■■について調べて参りますから、報告させてください」

「来週オフィス付近に立ち寄る機会があるので、ランチご一緒しませんか」

「じゃあ、その本お貸ししますよ。 外出ついでにお渡ししますね」

ここで重要かつお勧めなのは、その場で手帳を出してスケジュールを確認し、「●月●日の●時からでどうでしょう」と具体的なアポをとってしまうことです。 どうせ後で同じやりとりをするんですから、リアルタイムでやってしまった方が手間も時間もオトクです。 

このような形で、地道に良い印象を貯金していくことで、いずれ好意という利息が返ってくるのです。

「話す」のではなく「聴く」ことが大事

「聴く」というと受け身の行為のような印象を持たれがちですが、決してそんなことはありません。むしろ、積極的に「聴きに行く」くらいの意識がないとできない、能動的な行為なんです。 そして「聴き方」は自分を表現することでもあります。うなずきや相槌、身振り手振りを踏まえて「あなたの話をこんなに真剣に受け止めてますよ」ということを全身で伝える行為なんですね。

私がコミュニケーションに関して著述をするとき、「きく」という漢字は全てこの「聴く」を使っています。研修などで、「聞く」と「聴く」における厳然な意味の違いをご存じの方も多いのではないでしょうか。 

「聞く」の場合は「耳に入ってくる言葉や音を認識する受動的(受け身)な行為」のことであり、「聴く」は「言葉や音に注意深く耳を傾ける能動的な行為」のことです。 「聴く」の方がより積極的な意味合いになるんですね。「聴」という漢字をバラバラにすると「十の目で見るかのごとく、相手の心の声に耳を傾ける行為」だと読めますよね。私たちはそれくらい真剣に、相手に向き合って話を「聴いて」いるでしょうか。

もしかして、相手が話している間、「次、何を言おうかな」「どう突っ込んでやろうかな」と考えたりしてませんか。 その気持ちはもちろんわかりますが、自分の大事な話をそのように「聞き」流されていたらどう感じるでしょう。 無理やり話をつなげようとするよりも、相手の「話したい気持ち」を推し量り、きちんと「聴く」ことのほうがはるかに重要です。 カラオケで、あなたの十八番を聴かずに選曲してる人がいれば目立つのと同様、話す相手もあなたが本当に「聴いて」いるかどうかについては敏感に感じ取っていて、あなたへの印象を決めているかもしれませんね。

知っておきたい「相づち」の3原則

相づちの効用はかなり大きなものです。しかし意識的におこなっている人はあまり多くないため、少しの配慮でアドバンテージを得られる点だと言えます。具体的には、次の点に注意して返してみましょう。

①相づちのバリエーションを増やす

カウンセラーなど、「聴く」ことを職業とする人は、この相づちのバリエーションを増やして使い分けて、気持ちをこめて打つように訓練を受けているものです。 

「はい」「ほう」「ええ」「ふーん」「なるほど」「そう」「あら」「おや」「ふむ」「おぉ」「ほほう」「ふーむ」…

これだけでも、きちんと聴いてくれている、反応してくれたという感じが伝わってくるものですよね。

②相づちで、相手の話への興味関心を示す

「ええー!」「そうなんですか!?」「驚きました!」「すごいなあ」「なんですって!?」「そんなことってあるんですねー!」「知らなかったー!」「マジで!?」

このように積極的な反応が返ってきたら、話す方としても「ああ、きちんと聴いて興味を持ってくれているな」と張り合いが出ますよね。相づちには、会話をさらに弾ませる効果もあるのです。

③相づちで相手の話を促す

「それからそれから」「で、どうなったんですか!?」「続きを聴かせてください!」

これくらいの能動的な反応があれば、話し手は確実に盛り上がります。もっといろいろなことを話したい気分になりますし、積極的な興味を持って聴いてくれている聴き手に対して親近感を持つことでしょう。 

特に、「自分には大したネタがない…」とか「話しベタだ…」と感じている方ほど、相づちを積極的に打つように心がけるとよいでしょう。全体を10とするなら、自分が話すのは相づちも含めて2~3割程度、相手に残りの部分を話してもらうくらいのバランスでも会話は普通に成り立つものです。ぜひ試してみてください。

好印象を与える「うなずき」のやり方

「うなずき」は、聴き手のメッセージを伝えられる有効な手段なんです。話の内容に応じて、次のように種類を変えて使えば効果的ですね。

①速くて浅いうなずき

 「もっと話してほしい」

 「ここまでは十分理解できた。次をどうぞ」

 という意味で、相手の話をうながす効果があります。

②「う~む」という感じの、ゆっくりと深いうなずき

 「じっくり理解しています」

 「言っていることはちゃんと伝わりました」

 という意味で、相手の考えや気持ちを受け止めたことを示す効果があります。

いずれもささいなことかもしれませんが、話し手にとって「きちんと聴いてくれている」という感覚は心地よいもの。これ、実際に体感してみると歴然です。セミナーのワークで採り入れていることなんですが、2人一組になって雑談をして頂くんですね。そのとき、聴き手の反応を変えながらやってみるんです。最初は、聴き手はまったく何の反応もしません。話し手と目を合わせず、うなずきも相づちもしない状態で聴いてもらいます。 

私も被験者として体験したことがありますが、この「何のリアクションもない状態」、話し手にとってはもうメチャメチャ話しにくいんですね。目の前に相手がいるのに何もないと不気味でさえあり、独りごとを言ってるほうがまだマシという気持ちになってしまいます。

そして2回目は、きちんと相手の目を見て、うなずきも相づちも、適宜返しながら聴いてもらいます。実際やってみるとわかりますが、1回目との差は歴然。体感した方からも、「いかに「きちんと反応しながら聴く」ことが重要か、肌身にしみて分かりました!!」という声を多数頂きました。

 「目を見る」「うなずく」「相づちを打つ」。いずれも基本的なことばかりではありますが、相手に与える印象は実に大きいものです。当たり前のことを地道に、かつ着実にやり続け、そこから信頼感を醸成していくことが、伝わるコミュニケーションの第一歩なんですね。

話し手を変えるくらい、聴き手が反応しよう

「聴き手の反応が話し手を変える」ということがあります。

例えば、大勢の前で話すとき。 多くの人にとってそんな場面は苦手だと思われますが、その理由を聴いてみると往々にして、「反応がなかったり、聴いてない雰囲気を感じると、自分に興味がない、関心がないと思ってしまう」という恐れがあったりするものです。これは話すことを職業にしているプロの講師でも同様。たまに「まあ聴いてやってもいいけど」といった雰囲気を全開にして、腕組みをしながらふんぞり返って聴いている人がいたりしますが、大変やりにくく感じてしまいますね。

一方で、話すことに関してメモをとってくれたり、目を見てくれたり、いちいちうなずいたり、要所要所で「へー」「ほー」といった反応を返してくれたりする方がいます。講師の立ち位置からはこういった反応が意外とよく見えてしまうのですが、非常に励みになりますね。

実際、反応がよかったことで「せっかく聴いてくれてるんだから、アレも、コレも話しちゃおうかな」とノリがよくなってしまうことは普通にありますので、皆さまも受講生として勉強会や講演会に参加される際は、ぜひ反応してスピーカーをのせてやってください。1対1の会話でも同じことが言えるでしょう。

あとそのつながりでお話すると、セミナーや講演会などに参加する際には「最前列に席をとる」「質問や発言は最初におこなう」ことも有効です。いずれの存在も、講師にとっては「応援団」も同様。積極的に聴いてくれて、勇気づけられるという感覚なんですね。それだけで講師の記憶に残りますし、発言する機会があったり、休み時間などには個別にプライベートな会話もできたりする可能性があります。

「気持ち」を表現するボキャブラリーを増やそう

「相手の発言に対する自分の気持ち」を、自分なりの言葉で適切に表現することができれば、「相手の話をシッカリ聴いて、受け止めた」感がより強く伝わります。気持ちを表現するボキャブラリーを増やすことで、どんな状況にも対応できるようになります。では、感情の種類別にいくつか挙げてみましょう。

【喜び、期待】

例…うれしい、わくわく、満ち足りた、晴々した、誇らしい、イキイキした、心地いい、大感激、胸がはちきれそう

【悲嘆、失望】

例…がっかり、うんざり、げんなり、みじめ、情けない、傷ついた、寂しい、辛い、

  困惑、無念、悔やまれる

【怒り】

例…イライラする、腹が立つ、憎たらしい、苦々しい、ムカつく、うっとおしい、

  腹に据えかねる、恨めしい、不本意な

【不安、焦り】

例…落ち着かない、ドキドキ、混乱した、もどかしい、心ここにあらず、パニック、

  心もとない

使い方としては、このような形です。

相手 「君のおかげでプレゼンが通ったよ。ありがとう!」

あなた 「これからがほんと楽しみだね。僕もわくわくしてきたよ」

相手 「あ~、○○部長からまた嫌味を言われた~」

あなた 「大変だったねー。不本意だろうけど、いつものことだし気にするなよ」

このように、相手の感情を代弁するような適切な言葉を選び、自分の気持ちと合わせてコメントしましょう。 話し手は、自分の気持ちをわかってくれたことに対して心がオープンになり、双方の関係性の強化に繋がります。これは公私問わず有効ですので、ぜひ今日から試してみてください。

重要なのは「自分の問題」と思ってもらうこと

コミュニケーションの最終的な目的は、単に情報を伝えたり社交したりするだけではなく、「相手に自分の望み通りの行動をとってもらう」ことであると言えます。

人が説得されて、それによって何かしらの行動をおこすときには、本人が「そうだ、確かにそうした方がよさそうだな」という意思を持つものです。 こちら側の一方的な要求ではなく、相手に主体的に行動してもらうようにするために、どのようなコミュニケーションをとればいいのでしょうか。 

実は、3つのパターンを押さえておくだけでよいのです。 それぞれ、具体的には次のようなものです。

(1)「相手を巻き込む一言」を意識する

「●●さんはどう思いますか?」

「■■君の意見は?」

「▲▲様なら、こんな場合どうなさいますか?」

このように問われると、相手としても「自分の問題」として考えて答えざるを得なくなり、主体的に行動してくれる可能性が高まるはずです。

(2)「質問」によって、重要性を認識させる

こちらから何かしら提案したい商品やサービスがある場合、その「商品やサービスがないことで起こっている/起こり得る問題」、「それによって解決できること/得られるメリット」について質問してみましょう。

「もし○○さんが事故に遭われて、もしものことがあった場合、ご家族の皆さんの生活はどうなりますか?」(生命保険)

「日々それだけの印刷物がおありでしたら、1枚当たりのコピー単価が2円安くなれば、1年でどれくらいのコスト削減効果が見込まれるでしょうか?」(OA機器販売)

このように、「このままの状態であることがどれほどのリスクなのか」「自分の行動がいかに重要なのか」を主体的に気付ければ、メッセージの伝わりかたも全く変わることになるでしょう。  

(3)相手が思わず引き込まれるような情報を出す

セールスやお小言など、こちらの要求を伝えたいときは、情報を小出しにします。相手に「それはどういうことなんだろう」「ぜひ教えてほしい」と思わせ、逆に質問をしてもらうようにできれば有効です。

(よくない例)

あなた「非常に高利回りの金融商品を提案させて頂ければと思いまして…」

お客様 「興味ありませんので結構です」

(理想的な例)

あなた「月々3千円の積立で、2年後には最低でも8万円が手に入る方法があります。ご興味おありではございませんか」

お客様 「ほほう、ぜひ聴きたいですね」

このように、情報や価値を少しだけ示すことができれば、相手はそのテーマに引き付けられ、こちらの話を最後まで聞かざるを得なくなるのです。 私たちはつい一方的に言いたいことを言いっぱなしにしてしまうものですが、一工夫することで、ずっと効果的にメッセージを伝えることができるんですね。

質問は「半オープンクエスチョン」で

質問は、「はい」「いいえ」では答えられず、かといって漠然とはしていない、「半オープンクエスチョン」を心がけるのがお勧めです。 ちなみに、「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」はそれぞれこのような感じです。

クローズド 「仕事は大変ですか」(イエスかノーで答えられる質問)

オープン  「調子はどうですか」(答えの幅が相手に委ねられる質問)

どちらも、初対面でよく交わされそうな質問ですよね。 ただこのままだと、前者は「はい」か「いいえ」で終わってしまう可能性が高く、会話が続くイメージがありません。 また後者だとなんとでも回答できる自由さはあるものの、あまりに漠然とし過ぎていて、どう答えたらいいか分りませんよね。 初対面でお勧めなのは、適度に対象を絞り込んだ、その中間くらいの質問なんです。

半オープン 「今のお仕事で楽しいところはどんな点ですか」

「資格の勉強をやる中で、大変なことは何ですか」

       「この時期はとくに何がお忙しいんでしょうか」

このような質問だと適度に具体的でイメージがしやすいので、「自分のこと」として捉えられ、そこからの会話も盛り上がっていくことでしょう。

共通点をみつけよう

業界や商材、地域や会社規模、年齢や性別はまったくバラバラだとしても、いわゆる「トップ営業」と言われる人に共通するポイントはこの「共通点を見つけるのが上手い」ということです。

誰でも、初対面の相手と話すときは多少なりとも緊張してしまうものですが、目の前の相手と何かしら共通点があるだけで、急に親近感がわいて不思議と打ち解けられることがあります。いわば、心の扉が少しずつ開いていくような感覚でしょうか。 トップ営業はこれを活かすんですね。

一般的に共通点といって思いつくのは、年齢や血液型、生まれた月、星座、子供の存在、出身地、出身校、業界や会社のつながり、共通の知人、愛用しているブランド、よく行くエリアなどですが、そもそもそれらが「共通しているかどうかを探るための会話が必要」という本末転倒な状態になりかねません。

・目に見えてわかることをネタにしよう

実は、そんなに難しく考える必要はなく、もっと「目に見えてすぐに分かること」をネタにするだけでよいのです。

たとえば、このような会話です。

「いいメガネですね。私、まさにそんなデザインのを探してて。どこで買われたんですか?」

「暑くてもネクタイ締めなきゃならないなんて、お互い大変ですよねー」

「え!? もうAppleの新製品をお持ちなんですか!? 使い勝手はいかがですか」

本当にシンプルな共通点ですが、これだけでも双方の間に「見えない橋」がかかるような感じになり、その後の会話がスムースになる準備が整います。 

そんなネタも見つからない場合は、相手との「共感覚」を利用しましょう。「あなた自身と相手が確実に同じように感じているであろうこと」を口に出してみるんです。 

冬の寒い日、待ち合わせた場所が暖かい建物内などであれば、

「いやあ、寒空からこんな店に入るとホッとしますねえ」 

相手も同様に思っているであろう点を共有することで、共通認識と親近感が生まれます。

質問のしかた次第で、話がよりわかりやすくなる

初対面では、あまり突っ込んだ話までする機会はそれほど多くありません。 でも、「相手の話が興味深くて、もっと知りたい。ただ、どうも抽象的でよくわからない…」といった場面があるかもしれませんよね。そんなとき、こちらからの質問次第で話がよりわかりやすくなるという聴き方があるので、ご紹介します。これは採用面接官がよく使っている、「行動分析インタビュー」という方法ですね。ちょっと、面接の場を想定しながら説明しましょう。

まず、「一般的な質問」の例をご覧ください。 

「あなたの強みはなんですか?」

「将来どうなりたいですか?」

「これまでの仕事の中で、お客さんに接するときに大事にしていたことは?」

これらはすべて、回答者の「思考」や「感情」に関する質問です。重要な情報ではありますが、回答者の主観が入り込みやすく、どうしても抽象的なコメントになってしまいがちなのです。 また「こう答えたら有利だろう」という意思も働くので、「コミュニケーション能力抜群です!」「常に笑顔を意識しておりました!」など、なんとでも答えられてしまうんですね。

一方で、「具体的な質問」というのがあります。 同じ面接場面を想定すると…

「では、あなたがバイトリーダーとして『今までのやり方を見直そう』と提案されたとき、同僚や後輩の皆さんの反応はどうでしたか?あまり前向きではなかった人に対して具体的にどのように働きかけられたか、詳しく教えてください」

「現在のお仕事におけるあなたの失敗体験は?今から思い返すと、そのような結果になってしまった根本的な原因は何だと考えられますか」

このように、面接では過去実際にあった「事実」に関する質問がなされます。 相手の話が抽象的で分かりにくい時は、この聴き方を応用してみましょう。 

「なるほどー で具体的には、そこでどんなことがあったんですか?」

「では、それによってどんな結果になったんですか?」

「へー すごいですね! じゃあ、なぜそれが実現できたんだと思われますか?」

このように具体的な質問をされることで、相手としても「より具体的に、分かりやすく答えなければ」というモードになります。 この聴き方は、営業や接客で相手のニーズを明確化するときにも使えますね。

ただしこのような質問のしかたは、相手の話に積極的な興味を抱いていることを示す効果がある一方で、場合によっては「ポイントは何なんだ!」「結論を言え!」「なんでそう言えるのか!?」といった「詰問」っぽいニュアンスに感じられてしまう可能性もあるので、留意が必要です。

「相手が聞いてほしいこと」を聴いてあげよう

会話によって、相手に思いやりを示す方法があります。 そのポイントは、「相手が聴いてほしそうなことを察して、その点を突いて質問をする」というものです。

【一般的なやりとり】

A「ところで、この前の連休は何をされてましたか?」

B「金曜の夜から沖縄に行ってきたんです。 すっごく楽しかったですよ!」

【相手の気持ちを重視する場合の反応】

A「ところで、この前の連休は何をされてましたか?」

B「ちょっと旅行に行ってました。 ○○さんは?」

後者の聴き手Bが工夫したポイント、お気づきになりましたでしょうか。 このときBが察したのは、「あ、この話題を出したということは、Aは自分の経験を話したいんだろうな」ということです。 なので、自分の話はそこそこにしておいて、Aに話させるようにしたんですね。

私たちの身近には、「『オレの話を聴け!』というニュアンスが強烈に感じられる質問」というものが存在します。 ただ、私たちはあいにくそこまで相手の気持ちに敏感ではないため、そのメッセージに気づかないままということも多いんですね。 例えばこのようなものです。

「ねえねえ知ってる? お隣の木田さん、またハワイに行ったんですって」

「高校時代の部活は何やってたの?」

「君の座右の書は何かね?」

お察しのとおり、これらの質問はいずれも次のような意図があるわけですよね。

「木田さんがハワイに行ったことを知っているかどうか」を確認したいのではなく、「私もハワイに連れていけ」という強い要望

「高校時代の部活」を知りたいのではなく、「自分の高校自体の部活について語りたい」という気持ち

「座右の書」を知りたいのではなく、「私の座右の書について語らせろ」という気持ち

このように、相手の「意図」「気持ち」に敏感になり、相手が「主人公」になるように会話することで、話し手のイメージは更にふくらんで、コミュニケーションが自然に盛り上がるものなのです。 いずれもちょっとした違いですが、効果という点では大きな差となる一工夫。 ぜひ本日の会話から意識してみてください。

「コンテンツ」と「コンテクスト」、両方を意識する

「友人や家族など、プライベートでのコミュニケーション」と、「ビジネス上でのコミュニケーション」におけるもっとも大きな違いは何でしょうか。

「気を遣う、遣わない」

「敬語を使う、使わない」

「自分の発言に対する責任が重い、軽い」…

などなど、要素はいろいろとありますが、まとめると、「ビジネス場面のほうが、コミュニケーション時に意識すべき要素がより多い」といえるのではないでしょうか。

ここで少しだけ、言葉の説明をさせてください。 コミュニケーションにおいて、口に発する言葉、目に見える文章、そして発言者の表情など、表にあらわれる部分を「コンテンツ」といいます。これは「内容」とか「中身」という意味で、一般的にも文章や音楽、映像などを指してよく使いますよね。 そして、話し手や聴き手の感情、意識、ものの考え方、価値観など、表から見えない部分を「コンテクスト」といいます。これは日本語でいうと「文脈」という意味の言葉ですね。 

プライベートとオフィシャルのコミュニケーションにおける違いは、この「コンテンツ」と「コンテクスト」をどこまで意識しなければならないかの違い、といえるでしょう。

たとえば、相手が友人や家族など気の置けない関係であれば、これまでの付き合いの中で「話が合う」とか「趣味が同じ」、また「育ってきた時代背景や環境が同じ」といった共通事項が多くあるものです。 したがって、考え方や言葉の意味をいちいち説明したり意識して発言することもなく、気を遣わずに気軽な会話ができるはずです。 これは、「コンテクストを共有できている」状態であるといえます。 

しかしビジネス上でのコミュニケーションの場合、相手は年齢も社会的な立場も、そしてもちろん趣味趣向も、自分とはまったく違う人たちです。 当然ながら、そこに「共通言語」や「共通の価値観」があることはあまり期待できないため、会話をするにもいちいち「この言葉の意味はわかってもらえるだろうか」「こんな言い方は失礼にならないだろうか」など、いろんなことに気を遣いながらコミュニケーションをとっていかなければなりません。 それは「コンテクストが共有できていない」ということになります。 

初対面のコミュニケーションの場合、相手が同年代のように見えても、実際にどんな人かはすぐにはわかりません。 まずは、コンテンツとコンテクスト、両方に気を配ることが大変重要なのです。 

コミュニケーションとは情報の交流だけではなく、感情の交流でもあるんですね。

この記事を書いた人

新田 龍

働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト。
「ブラック企業就職偏差値ランキング」ワースト企業出身。働き方改革推進による労働環境およびレピュテーション改善支援と、悪意ある取引先相手のこじれたトラブル解決が専門。各種メディアで労働問題・ブラック企業問題を語り、優良企業は顕彰。トラブル解決&レピュテーション改善実績多数。著書21冊。

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